この発言を聞き、「この一言で終わってしまうのか? 我々は永久に国際社会での発言の場を失うことになるのではないか」と不安になりましたが、その思いはいい意味で裏切られたのです。

国連女子差別撤廃委員会の対日審査会合で、慰安婦問題について日本の立場を説明する杉山晋輔外務審議官=2月16日、スイス・ジュネーブ
国連女子差別撤廃委員会の対日審査会合で、慰安婦問題について日本の立場を説明する杉山晋輔外務審議官=2月16日、スイス・ジュネーブ
 オーストリアのホッフマイスター委員(女性)が質問をしました。「慰安婦問題は人権に反している。被害者は未だ納得していない。(日韓)2国間の合意が昨年の12月になされたが、どう実行するのか。日本政府は中国やフィリピンなどの他の国の被害者にはどう対応するのか。被害者への補償や加害者訴追、日本の軍当局の責任追及はどうするのか。日本の歴史教科書の改訂はするつもりがあるのか。被害者への賠償や精神的なリハビリを行う用意があるのか」

 これに対する杉山審議官の答弁に、私は驚きました。「日本の真実」を踏まえたものだったからです。
「政府は歴史問題が政治外交問題化された1990年以降、強制連行の有無についての調査を行ったが、これを確認できるものはなかった。

 これが広く流布された原因は、吉田清治氏(故人)が自著の中で、済州島において自らが日本軍の命令で、大勢の女性狩りをしたという虚偽を述べたことによる。朝日新聞はこれを大きく報道し、国際社会に多大な影響を与えた。しかし、これは彼の完全な想像の産物である。朝日新聞もこの事実関係の誤りを認めた。

 20万人を慰安婦にしたという数字に裏付けは無い。『20万人』という数字は、朝日新聞が女子挺身隊と慰安婦を混同したことが元になっている。女子挺身隊とは労働であり、性の相手ではない。『性奴隷』という表現は事実に反する。

 日韓合意で日本政府は今後、10億円を提供する。これで元慰安婦の心の傷をいやすための事業を行うことにしている。他の国についても、サンフランシスコ講和条約や各々の二国間条約で個人の請求も含めて法的に解決済みである」

 クマラスワミ報告書を否定しなかったことを除けば、当初国連に提出しようとしていた回答(後述)と同様の内容です。書面ではなく、口頭での説明になってしまいましたが、国連の場で、日本政府が「強制連行、20万人、性奴隷」を否定したというのは大きな前進です。

 この回答を受け、委員は驚いたようです。中国の女性委員ゾウ氏は続けて次の質問をしました。

 「日本政府の回答は矛盾している。歴史の事実に反する。慰安婦問題を否定しているのに、一方では日韓合意を認めている。もし、慰安婦問題がないのであれば、なぜ日韓合意をする必要があるのか」

 これが中国の委員から出されたものでなければ、当然の疑問でした。今まで一度も国際社会で反論も否定もせず謝罪を繰り返してきた日本政府がいきなり、これまでの通説を否定したのですから。