国連に額ずく日本政府


 では、日本は、この委員会とどんなやり取りをしているのか。

 筆者は、「夫婦別姓制度」は一部の跳ね上がり議員の仕業と即断していた。ところが、実は政府が条約履行の一環として推進し(政府の取り組みについては、本誌昨年八月号掲載の岡本明子「『少子化対策としての夫婦別姓』の嘘に騙されるな」に詳しい)、その背後で、「世界革命」の本拠地である女子差別撤廃委員会がそれを実施せよ、と命令しているのだ。

 日本政府は一九八五年のCEDAW批准以来、第十八条に基づき、国連にこれまで五回、「条約の実施のために執った立法上、司法上、行政上その他の措置」を報告している。これを見れば日本で起こるフェミニズムにまつわる問題は、全て条約遂行のために起きていることが分かる。この報告(平成十四年九月)はA4文書で目次を除き五十ページに及び、現在政府が実施している恐るべきフェミニズム政策が一覧できる。

 最新版は第五回報告だが、その中で特に注目すべきものは、(1)男女共同参画基本法の公布・施行(2)従軍慰安婦問題(3)女子差別撤廃条約選択議定書(4)民法改正の検討(5)人権擁護法案(6)間接差別(前述)である。

 この報告に対して、撤廃委は二〇〇三年(平成十五年)七月十八日にコメントを出した。

 (1)について。基本法という「革命綱領」の制定成功に「祝福する」との賛辞を呈し、国及び全都道府県での「男女共同参画基本計画」(=革命実践の計画)策定を称賛しながらも、計画がすべての市町村で策定されていないことに「留意する」と未策定の自治体への政府圧力を促している。「革命の大義」の前には、地方自治権も侵害される。
 (2)についてはノーコメント。もともと条約に関係ないことに委員会がちょっかいを出したもの。結局諦めたか?
 (3)について、政府報告が「締結の是非について、真剣かつ慎重に検討している」としたのに対し、委員会は、「締約国が条約の選択的議定書の批准の検討を継続することを奨励する」と尻を叩いている。この議定書は、個人、団体が直接国連の委員会に権利侵害を通報する仕組みを作るものだ。革命本部は革命支部の報告を信用せず、世界中にスパイのネットワークを張ることを狙っている。そこにあるのは政府=公権力に対する不信感であり、国連によるフェミニズム世界革命にはNG0を称するフェミニストたち(CEDAW採択時には「女性活動家」と称されていたことを思い出して頂きたい)の意向が強く働いていることを示唆している。
 (4)政府報告「夫婦の氏については…制度の導入に向けて努力が続けられている」に対し、委員会は、「民法が、婚姻最低年齢、離婚後の女性の再婚禁止期間、夫婦の氏の選択などに関する、差別的規定を依然として含んでいることに懸念を表明する」と言う。早くやれと言っているのだ。現行法制では、氏は夫妻のどちらのものになるにせよ選択は夫婦に任せている。何故差別だ? 委員会は差別概念を無限に拡大しようとしている。
 (5)の人権擁護法案は法務省が今国会に提案しようとしたが、人権侵害の定義の曖昧さや「人権擁護委員」選任基準の不透明さ、「人権委員会」の強権などに自民党内から批判が噴出、本稿を執筆している三月十八日段階では提案されるかどうか結論は出ていない。

 この法案について政府は、「現行の人権擁護制度を抜本的に改革するため、二〇〇二年三月、人権擁護法案を国会に提出した。この法案は、性別による差別的取り扱いやセクシュアル・ハラスメントを含む差別・虐待等の人権侵害を禁止するとともに、新たな独立行政委員会として設置する人権委員会を主たる担い手とする新しい人権救済制度を創設し、人権侵害による被害の適正かつ迅速な救済・実効的な『予防』等を図ることとしている」と報告していた。

 これに対して、撤廃委は、「人権擁護法案を国会に提出したことに満足をもって留意しつつ、委員会は、法務省の下に設置されている『人権委員会の独立性』について懸念を表明する」「『人権委員会』が、『独立の機関』として、女性の人権が適切に対処することが確保されるよう、国内人権機構の地位に関する原則(いわゆる『パリ原則』)に基づいて設置されることを勧告する」とコメントした。