既に筆者はプレートの動きと、内陸直下型地震、火山噴火、プレート(海溝)型地震の関係を図のように整理している。
 ステージ1では、フィリピン海プレートや太平洋プレートがユーラシアプレートや北米プレートの下にもぐり込み、その圧力でユーラシアプレートや北米プレートが割れる。これによって内陸直下型地震が生じる。M7.3の深さ約10kmの兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)などがこれにあたる。日本では過去100年以上にわたってM7以上の地震は、5年に3回程度起きる地震であり珍しくない。

 しかし、この時は神戸という大都市直下の浅いところで地震が発生したため、地震規模に比して震度が大きく、建物の倒壊などの被害が多かった。神戸周辺ではおよそ6500名が死亡したり行方不明になったりした。7400年ほど前の縄文海進と呼ばれる時代に海底に堆積したプリンのようにやわらかい湿った粘土や旧河道で被害が大きくなった。

 ステージ2では、ユーラシアプレートや北米プレートにあるマグマ溜まりが圧縮されて火山が噴火する。口永良部島、桜島、阿蘇山などの噴火がこの例である。この段階の火山噴火はマグマ溜まりにあるマグマが噴出してしまえば一段落で、それ以上大きくはならない。今回もこの段階の噴火は既にピークを超えており、熊本地震により阿蘇山などが巨大噴火をすることはないと思われる。
盛んに噴火する阿蘇山(2015年4月)
盛んに噴火する阿蘇山=2015年4月(筆者撮影)
 ステージ3では、ユーラシアプレートや北米プレートが耐えかねて跳ね上がり巨大なプレート型(海溝型)地震が発生する。2011年3月11日の東北地方太平洋地震や、近い将来発生する南海トラフ地震である。

 その前にステージ1のように内陸直下型地震が起きることがある。今回の熊本の地震は、おそらくこれにあたる。過去の事例としては、東北地方・太平洋地震(東日本大震災)の前の岩手・宮城内陸地震で、大規模な山地崩壊がみられた。そして、その後に起きた東北地方・太平洋地震では地震の揺れによる建物の倒壊よりも、津波による被害で約2万人の死者・行方不明者が発生した。

 ステージ4ではプレート間の摩擦が減少し、従来よりも数倍の速い速度で太平洋プレートやフィリピン海プレートが北米プレートやユーラシアプレートの下にもぐり込み、ふたつの重大なことが引き起こされる。ひとつは、もぐり込んだプレートが溶けてマグマとなり火山の巨大噴火を引き起こす。M8.5以上のプレート型地震で、火山が巨大噴火していないのは東北地方・太平洋地震だけであり、今後の火山の動向が心配される。ちなみに富士山はプレート型(海溝型)地震であった宝永地震(1707年)の49日後に噴火している。2010年の南米チリで起きたマウレ地震(M8.8)では、プジェウエコルドンカウジェ山が半年後に、2014年3月3日にビジャリカ山、4月26日にはカルブコ山が巨大噴火している。
噴火が落ち着いてきた阿蘇山=2016年1月(筆者撮影)
噴火が落ち着いてきた阿蘇山=2016年1月(筆者撮影)
 さらに、もうひとつは、沈み込むプレートの速度が速くなり過ぎて、太平洋プレートやフィリピン海プレートがちぎれて(正断層)、再び海底でアウターライズ型地震が発生し、津波が起きる。1986年の明治三陸地震(M8.2~8.5)はプレート(海溝)型地震であったが、1933年の昭和三陸地震(M8.1)は、そのアウターライズ型地震であった。前者では死者、行方不明者約22000名、後者では約3000名の犠牲者がでた。これらのことを考えると、台湾-沖縄-西日本-東日本の一部ではステージ3を、東日本ではステージ4に注意をはらう必要がある。

 今回の熊本の地震は、ステージ3の南海トラフ地震の前奏曲的な意味合いが強いと考えられ、数年以内に南海トラフ地震の発生が懸念される状況にある。ちなみに、著者の推計では南海トラフ地震の津波被害者は、47~50万人である。

 さて、熊本地震の詳細をみると、益城町で被害が大きい。これは中央構造線という日本最大の断層帯(長野-愛知-三重-和歌山-徳島-愛媛-大分-熊本)の西端にあたる日奈久(ひなぐ)断層帯が町の近くで活動したことが原因である。また、緑川の支流の秋津川、木山川が阿蘇山の溶岩流を侵食した開析谷の崖に沿って集落が集中しており、地盤が悪かった上に古い建物が多かったことも被害を大きくした。溶岩流の上に居住していれば、建物の倒壊は少なかったであろうが、そこでは水が得にくいために、崖の斜面や開析谷の中に居住していたために災害となったと考えられる。

 また、JR熊本駅より西側は、縄文時代に海であり、そこに堆積したプリンのような粘土が被害を拡大させた。これに対し、高速道路や鉄道は、比較的硬い溶岩流のような場所と地層が軟弱な開析谷との境目で揺れ方が異なったために被害が出たと考えられる。