共和党内部はどうなっているのか?


 党大会当日になっても候補者が決まらない、というのはもともと民主党の専売特許であった。共和党は早いうちに「プリンス」を決めておき、本命の候補者にはあまり傷をつけない、予備選のときは候補者を少数に絞り、なるべく紳士の戦いをする、というのが1990年代までの共和党の「お作法」であった。

 ところが2008年選挙以降は、大勢の候補者による「真剣勝負」が当たり前になっていく。2012年選挙では、ロムニー候補が勝ちを決めたのは他の候補が全員ギブアップ宣言した5月になってからであった。2016年選挙はそれよりも長期戦になりそうである。なおかつトランプ氏の流儀が他候補にも感染し、党内の攻撃がどんどんエスカレートしている。今では、GOP(Grand Old Party)という別称が似つかわしくない政党になりつつある。

 もともと共和党は、いくつもの勢力からなる連合体的な性質がある。下記のようなグループをひとつにまとめておくことは、けっして容易なことではない。

○共和党内の主要勢力
・ 小さな政府派(リバタリアン、ティーパーティ)→政府そのものに反感
・ 宗教的右派(南部を中心とする白人層)→社会政策に関心
・ 強いアメリカ派(軍事関係者、ネオコン)→外交政策に関心
・ プロ・ビジネス派(経済界、ウォール街)→経済政策に関心

 これらを見事に束ねたのがレーガン大統領であった。当時は「反共産主義」という共通目標があったため、足並みの乱れは少なかった。レーガン政権は「小さな政府」を掲げて減税を行いつつ、軍拡を進めて当時のソ連に勝利し、規制緩和を通じて雇用を拡大した。かくして1980年代は「保守主義の時代」と呼ばれるようになったわけである。
 ところが冷戦終了後は綻びが生じ始める。1992年、96年の共和党予備選挙を賑わせたのは、保守論客のパット・ブキャナン候補だった。彼が掲げた「アメリカ・ファースト主義」は、海外からの米軍撤退や対外援助の中止など、孤立主義的傾向を打ち出したものであった。興味深いことに、その中には「保護貿易」「日本叩き」など今のトランプ候補の主張に重なる部分が少なくない。

 米国の保守主義思想に詳しい会田弘嗣教授(青山学院大学)によれば、トランプ現象は米国が歴史的に持つポピュリズムを縦軸とし、世界同時発生的な排外主義のポピュリズムを横軸としている。1990年代のブキャナンによる異議申し立ては、90年代の好況のうちに忘れ去られていくが、2016年のトランプ現象はしぶとい生命力を有している。その背景には経済状況の悪化やテロ事件など国際環境の変容、さらにはSNSなどコミュニケーションスタイルの進化といった要因が重なっているのであろう。