”トランプ大統領”実際には難しいか?が、しかし…


 ニューヨーク・タイムズによると、現時点(2016年3月27日午前)でトランプの共和党代議員(Delegates)の獲得数は738名、2位のテッド・クルーズは463名、主流派として孤軍奮闘するケーシックが143名である。残された代議員は848名、共和党の代議員の過半数は1,237名なので、トランプはちょうどあと500名弱の代議員を獲得すれば有無をいわず共和党大統領候補に指名されるが、ことはそう簡単にも行きそうにない。

 同紙の予測によれば、6月7日に行われるカリフォルニア州予備選挙(代議員数172名)でトランプが勝てば過半数の可能性があるが、ここでクルーズに負けると過半数には一歩届かない、という風になる。そうなると候補者のいずれも過半数には届かないので共和党党大会で決選投票が行なわれる。

米ニューヨーク州ベスページで開かれた集会で演説するトランプ氏(AP)
米ニューヨーク州ベスページで開かれた集会で演説するトランプ氏(AP)
 冒頭の冷泉彰彦氏によれば、「いずれの候補も過半数に届かない場合は、共和党党大会で1回~3回にわたって決選投票が実施される可能性が高まっている」(Newsweek日本語版 2016年3月15日)という主旨の分析を行っている。このシナリオが現実化すれば、トランプが共和党党大会で指名される可能性は遠退き、ロス・ペロー(1992年)のように民主・共和でもない第三の独自候補として脚光を浴びる可能性もある。国際政治学者の藤原帰一氏もこの可能性に言及している。いずれにせよ、6月7日の大票田・カリフォルニア州の結果を見極めるまで、トランプの周辺は予断を許さない状況が続く。

 ちなみに最後に筆者の見解を述べると、前述の「保守の三分」分類で、私と最も親和性が高いのは3)である。私は、憲法9条2項を改正して対米従属によらない、自主防衛の道が日本の進むべき路線であると常日頃から思っているが、一方でトランプの反知性的な物言いには辟易して、とても彼を政治家として評価できる立場にはなかった。 

 しかしながら、事ここに至って、180度考え方を転換し、「日本の対米従属脱却」という視点で考えれば、日本の保守派からトランプ大統領待望論が沸き起こっている事実は、彼のレイシスト的発言は看過できないにせよ、筋論としては肯定するべきかなとも思いはじめている自分を偽ることが出来ない。真に「日本の対米追従」を終焉させるのは、もしかするとトランプ大統領が最適なのかもしれない可能性がある。

 無論この場合は、かわぐちかいじ氏の『沈黙の艦隊』のように、日本が能動的に「対米追従からの脱却」を果たすのではなく、どちらかといえば「日本がアメリカから一方的に見放される」状況に陥るのだが、どちらにせよ「対米自立」が加速するのは間違いはない。まるで作家・村上龍氏が描いた『希望の国のエクソダス』や『愛と幻想のファシズム』といった世界に近い、「日本人自らが考え、選択する自主自立の国・社会」の可能性が開けるのかもしれない。そこへ、わずかにでも希望を見出す私が居る。

 いずれにせよ今後の動静から目が離せない。今年は参院選も含め、興味深い”夏”になりそうだ。

(2016年3月27日 Yahoo!ニュース個人 古谷経衡「だれ日。」より転載)