井の頭自然文化園のアジアゾウ「はな子」=2011年1月29日(三鷹市提供)
井の頭自然文化園のアジアゾウ「はな子」=2011年1月29日(三鷹市提供)

はな子の1票を重く受け取る


 なぜ日本人は海外の意見に弱いのでしょうか? よく考えてください。確かにタイには野生のゾウも、ゾウ使いも沢山いますが、タイのネットユーザーは専門家ではありませんから、ただ少ない情報から自分の中にあるイメージで回答しているにすぎない状態です。簡単に言えば、日本にはニホンザルが沢山いて、サル使いも沢山いますが、貴方がニホンザルに対する専門的なコメントを求められたとき、どの程度信憑性の持てる返事をかえせるでしょうか…?

 僕は30万~45万の署名より、はな子の1票を重く受け取るべきだと思う。ゾウは犬と同じように、いつも生活している人との別れを嫌い悲しみます。僕はこれをはな子の1票として受け止めます。

 それに、現在のはな子の飼育環境が虐待に近いものなら、とっくの昔に死んでいるでしょうね。

 実際のところ、はな子は切り刻んだ野菜や果物、スポーツドリンクなどの特別な餌を、歯が一本になって以来、30年間以上手間暇かけ与え続けているからこそ今があるのです。忘れないでください。はな子は日本最高齢のゾウですぞ!

 確かに、近代の新しい設備で飼育されている他の動物園のゾウたちと比べると、明らかに解放感にかけ、コンクリート丸出しの獣舎は、いかにも人工物の象徴であり、見る人の感情を痛めつけるでしょう。しかし、実際には多くの野生種において、「この人工的な環境が大好きだ!!」という個体がたくさん飼育下(飼育されている動物)では現れます。

 ひょっとしたら、既に皆さんも経験しているかもしれませんね。例えば「飼われているインコや文鳥が、部屋の中で遊ばしていると自ら籠の中へ戻り寝る或いはくつろいでいる。また犬の繋留鎖が切れているのに犬小屋の中で寝ていた。晴れの日に子供が自分の部屋から出てこない」なんて言うのも、多くの場合が「この人工的な環境が大好きだ!!」という飼育下の野生動物の行動と、同じ作用の働きかけにより起きた現象です。

 要するに、人がイメージするほど人工物を動物たちは嫌っていないと言いたかったのです。それどころか、人が木や岩などを飼育スペースにレイアウトしてやったにもかかわらず、繁殖率が下がったり、予期せぬ怪我や事故を多発させることもあるのです。

 つまり飼われている動物からすると、木や岩をレイアウトしても、結局は人の目を楽しませることを前提とした人工物にすぎないのです。もし100%動物のためのレイアウトを本気でしたなら、3~5回は足を運ばなければヒョウを見ることができないとか、10回近く見に来たけど一度も見たことのないアルマジロ…。なんてことになってしまうでしょう。

 幸いゾウは人を大好きになってくれる動物なので、ものすごく手の込んだ森を飼育スペースに作ったとしても、人のいる方に頻繁にきて、愛嬌を振りまいてくれることでしょうが…。しかし、レイアウトを考えたスタッフからすると森に入らないゾウは、場合によりつまらない結果なのかもしれませんね。