わずか4メートルという至近距離で観察「ゾウの森」


 人気がV字回復したのには、それなりの理由がある。たとえば、トラの息遣いや迫力を間近に感じられるようにと、トラ舎は「人止め柵」を撤去。頭上を歩く空中通路も設けている。「サルワールド」のゴリラも、本来の自然の姿を再現。木の実を食べに木に登るゴリラのために、エサも天井部分から与え、そういう行動を見ることができる。他にも、アイデアが満載で、市民目線の動物園に生まれ変わったと言える。

 獣医師・学芸員の坂本英房さんは、こう話す。「大幅なリニューアルはこれまでなかった。建物が老朽化していたこともあり、約7年かけて整備しました。今は滞留時間が長くなっています」

 さまざまな工夫や仕掛けが施されており、見どころ豊富なだけに、うれしい結果だろう。そんな中、「ゾウの森」では、アジアゾウがわずか4メートルという至近距離から水浴びなどを観察できる。今や人気者になっている子ゾウだが、以前からいる大人の一頭に加え、オス1、メス3はラオス政府から寄贈されたものだ。

 「小さい社会ですが、群れで生活していますので、ゾウ社会の構造がわかるんですよ。オスがいじめられていると、リーダー格のお姉ちゃんゾウが止めに入ったり、慰めたり、そういう行動が垣間見えます」とのこと。

水浴びでじゃれ合うゾウの子供。見ている方がハラハラする=京都市左京区の京都市動物園
水浴びでじゃれ合うゾウの子供。見ている方が
ハラハラする=京都市左京区の京都市動物園

学芸員が語る「ゾウ寄贈秘話」


 さて、この子ゾウの寄贈には、秘話があり、それはあまり知られていない。ゾウの取引は、絶滅の恐れがあるため、ワシントン条約で規制されているためだ。しかし、今回はゾウを群れで飼育して繁殖につなげる研究を進めることや、2015年が日本とラオスの外交関係樹立60周年にあたり、無償で寄贈されたという。

 「繁殖の計画をつくり、そのプロジェクトを立ち上げました。ラオスでもかつては多くのゾウが生息していましたが、最近は乱獲や自然環境の変化などで減少し、同国内のゾウは500頭ほどだと言われています。ゾウの受胎率はわずか5%で、100回やって5頭しか産まれない。そんな状態です。だから両国が一緒になって繁殖の研究をするということで、届け出を出し、はじめてワシントン条約のOKが出たという経緯がありました」(坂本さん)

 京都ラオス人民民主共和国名誉領事館、名誉領事の大野嘉宏さんは、ラオスでの子ゾウ探しに奔走した1人で、こう振り返る。

 「動物園から譲り受けたと誤解されがちですが、違うんですよ。ラオスの山岳地帯にある村を丹念に調べ、何度も訪れ、4頭確保するのに実は3年もかかっているんです。野生ゾウは飼育に向かないため、農作業や運送に使う“使役ゾウ”を探し、ようやく見つかったんです」

 そのような苦労を経て、小ゾウたちは今、元気な姿を見せている。

(文責/フリーライター・北代靖典)