あいまいな?「緊急事態」の定義


 具体的にはどのような内容なのでしょうか? まずはどのような状態を“緊急事態”と想定しているかをみてみます。草案では大きく分けて3つのケースを想定しています。(1)外部からの武力攻撃、(2)内乱等の社会秩序の混乱、(3)大規模な自然災害です。

 これに対し、憲法学が専門の聖学院大学政治経済学部の石川裕一郎教授は、規定のあいまいさを指摘します。「条文では『内乱“等”による社会秩序の混乱』と、内乱以外も想定しているのです。例えば、“ストライキ”や“金融不安”なども想定しているのかという疑念があります。さらに問題とするのは、条項の最後に『その他の法律で定める緊急事態』と記載されている点です。法律でこの3つ以外のケースも作り得るのです」。もちろん、緊急事態条項が創設されれば、国会で議論されるので乱暴なやり方はできないにしても、ある程度は政権の思い通りにできる可能性があるのです。

 自民党は日本国憲法改正草案の提言と併せて、「Q&A集」も発表しています。その解説には、緊急事態条項創設の目的を「東日本大震災のような大災害のときに、政府が迅速に動けるようにする」とあります。しかしこれらはもう、「現在の災害対策基本法や災害救助法の下、都道府県知事や市町村長の判断でほとんど対応できる」などと、憲法学者や弁護士が主張しています。さらに、日本国内が戦争になったと場合も既存の法律で対応できるのです。敵が攻めてきたり内乱が起きたりした場合は、自衛隊法や警察法があるのです。

 自然災害以外での緊急事態条項創設の論拠となるのは「国政選挙」関連です。「衆議院が任期満了で総選挙になったときに、たまたま災害や外部からの武力攻撃で、選挙ができないまま4年経ったとします。衆議院の任期は4年と憲法で決まっていますが、任期延長の規定はありません。法律で任期を延ばすことはできないということで、緊急事態条項の創設という形で憲法に加えようとしているのです」(石川教授)。