弁護士も医師も…専門家が要らなくなる


 すでに、AIを開発している側では、人間とAIが戦えば、人間が負けるのは当たり前になっている。研究は、もはや「人間を超えるAI」をつくるのではなく、「AIをどう運用すれば人間に貢献させられるのか」に移っている。

 現時点でも、AIは次々に人間世界に進出している。AIとはいかなくとも、たとえばスーパーのレジが自動化されたこと、会計ソフトが複雑な税務処理をしてくれることなどが進んできた。話題の自動運転車もこの流れの一環で、2020年には実用化は達成される見込みだ。

 このようなAIが汎用化する未来をわかりやすく書いた本がある。昨年、出版された『AIの衝撃』(講談社新書)で、著者の小林雅一氏には、私が編集者時代に何冊か、IT化が進む未来を取材して書いてもらったことがある。

 彼は、今回の本のなかで、以下の3点をポイントとしている。

 ★︎現在のAI技術は、単なるコンピュータの発展ではなく、脳科学の研究成果を応用した「ディープ・ニューラルネット」と呼ばれる技術により、「パターン認識能力」(音声や画像を認識する能力)、「言語処理能力」などが大きな進化を遂げている。

 つまり、コンピュータはやがて人間と同じく汎用の知性を備え、いずれは人間のような意識や精神さえも宿すようになると考えられる。

 ★すでにAI技術は、掃除ロボットやドローンなどを生み出している。自動運転車はもちろんAI技術が結集する。こうしたAI技術は巨大なビジネスを生み出すので、グーグル、フェイスブックなどの世界的なIT企業が研究開発体制を急速に整えている。残念ながら、日本の産業界界はこのAIに大きく遅れている。

 ︎★AIがこのまま進んでいくと、人間はどんどん必要なくなる。つまり、「機械が人間の仕事を奪う」可能性がある。また、AIは進化の過程で自然発生的に自らの意志を持つので、それをつくり出した人間の意図とは違う方向へ進化する恐れもある。理論物理学者スティーブン・ホーキング氏やビル・ゲイツ氏など、多くの有識者が警鐘を鳴らしている。

 この3ポイントのなかで、もっとも重要なのは、近未来には確実に「機械が人間の仕事を奪う」ということだろう。単純作業なら、いまやすべてロボットがこなしてくれるようになったが、頭脳労働までもがAIがこなすようになる。そして、専門家までが不要になる。

 たとえば、いまある医師のほとんどの仕事はAIロボットがこなす。現在、病院で行なわれている医療診断では、医師は患者を見ないで、ひたすらPC画面に出た血液検査・レントゲン検査・MRI検査などを見ることで行なわれている。手術も、ある程度はロボットアームがやってくれる。  すでに、米国の「ニューヨークメモリアルスローンケタリングがんセンター」では、IBMと協業のもとに、コンピュータが、患者個々人の症状や遺伝子、薬歴などをほかの患者と比較することで、それぞれに合った最良の治療計画をつくっている。
 司法書士も弁護士も会計士もAIで十分代替が利く。たとえば、法務に関するデータ処理はもうコンピュータの仕事だ。米国では、何千件もある弁論趣意書や判例はほぼデータベース化され、たとえば、シマンテック社の法務サービスを利用すると、2日間で57万件以上の文書を分析して分類することができるという。この結果、弁護士アシスタントであるパラリーガルや、契約書専門、特許専門の弁護士の仕事はほとんどいらなくなった。

 「e-government」(イーガバメント:電子政府)を世界に先駆けて達成したエストニアでは、国民はソフトを用いて税務処理や書類申請などができるため、会計士や弁護士などが失業した。最近、日本では長距離バスの事故や認知症の人間が運転した車の暴走事故が起こったが、いずれドライバーは必要なくなるのだから、こうした事故は起こらなくなるだろう。

 しかし、その先に待ち構えているのは、AIが暴走し始めたら、どうなるのかという問題だ。