2045年、AIは全人類の知能を超える


 現在、私たちが直面しているのは、グーグルのエンジニア、レイ・カーツワイル氏が提起した「シンギュラリティ」問題である。これは、「2045年問題」と呼ばれ、この時点で、コンピュータの能力が全人類の知能を超えるのだという。

 いまや、ある程度長くて複雑な質問にも検索エンジンは回答してくれる。それが、人間以上の知能を持ったAIになれば、もはや私たちは考えることも働くことも必要がなくなる。私が仕事をしている分野で言えば、記事も本もみなAIが書いてくれることになる。すでに、天気予報のような記事はロボットが書くようになっているし、ハリウッドでは映画の脚本作成に、脚本ソフトが使われ出している。

 AIが発達するとどうなるかということで、衝撃を覚えた映画がある。2014年に公開された。『トランセンデンス』だ。この映画は、ジョニー・デップ演ずる科学者のウィルが、彼の死後、妻によってスーパーコンピュータにアップロードされ、想像もしなかった進化を遂げていくというものだ。

 つまり、ウィルは死後も、デジタルとして生き残り、頭脳や意識が進化していく。そうして、“神の領域”へと近づき、暴走を始めるという内容だった。つまり、デジタル上では「人間は死なない」、そして「進化さえ遂げる」のだ。

 驚くべきことに、すでに、「デジタルクローン」をつくってくれるネットサービースが登場している。たとえば、死んだ家族や親戚、友人とオンライン上で、コミュニケーションを取れるサービス「Eterni.me」というサイトがある。

 故人のネットでの情報をできるかぎり収集し、それをアルゴリズム化、AI化し、故人の人格に似たアバターを作成する。こうすると、そのアバターと対話することさえできる。

 このような近未来を考えると、今後、もっとも考えなければいけないのは、AIという人工頭脳そのものではない。AIは人間を超えてしまうのだから、それが本当に私たち突きつけている問題は「では、人間とはなにか?」ということにほかならない。AIには、いまのところ倫理観も哲学もない。善悪がなんだかもわからない。

 自動運転車の開発でもっとも問題になっているのは、テクノロジーではない。たとえば、プログラムをつくるとき、研究者が悩むのは、どのようなコードを書けばいいのか?ということだという。米国のある研究者は、こう言っている。

「たとえば、猫が道路に飛び出してきたとします。そのとき、AIにどのような判断をさせるかでは、猫の命は人間の命に比べどのくらい重いのかということを決めなければなりません。1人の人間の命の価値は、猫何匹の命に値するのか? 100万匹ですか? 1億匹ですか? では、人間が飛び出してきたときはどうしますか? ドライバーと飛び出してきた人間との命の価値判断をしなければなりません。そんなコードは書けないのです」