戦前のNY万博に登場した声に反応するロボット


 今では普段の生活でも、スマートフォンやタブレットでは自然言語処理を用いたサービスが定着していますし、指紋認証や顔認証を行うシステムも決して珍しいものではなくなりました。人工知能(AI)という言葉が最初に使われたのが60年前。マサチューセッツ工科大学やスタンフォード大学で認知科学者として活躍したジョン・マッカーシー博士が命名したものですが、それ以前から現在の人工知能の礎とも呼べるものが、フィクションとノンフィクションの世界の両方で作られてきたのも事実です。

 1939年にニューヨークで開催された万国博覧会では、当時のアメリカ企業で最先端を走っていた総合電機メーカーのウェスティングハウス・エレクトリック社が、全長2メートルのロボット「エレクトロ」 を展示し、話題を集めました。エレクトロは頭部や手足を動かすだけではなく、タバコを吸い、風船を膨らますといったパフォーマンスも行いました。加えて、特筆すべきこととして、人間の声のリズムに反応して歩行を開始し、言葉を言い返す機能を持っていたことでした。今の人工知能のように、それぞれの人間のニーズに合わせた受け答えは無理であったものの、ロボット内部に作られた蓄音機から流される78回転のSPレコードには約700フレーズが収録されており、人間の声に反応するロボットは当時としては非常に画期的なものでした。

 前述のTayのような、俗にいう会話型ボットのパイオニアは、1966年にマサチューセッツ工科大学のジョセフ・ワイゼンバウム氏が開発した自然言語処理プログラムの「イライザ」になります。これはコンピューター上でユーザーからのテキストでの質問に対し、質問で答えるという形をとっており、患者と医師の会話を想定したシチューエーションの中で、ユーザーがテキストで体調や病気の症状についてたずねると、それに対して医師役のイライザがテキストで返答するというものでした。