戦略的な対外宣伝活動を担う組織を


小浜 憲法改正の大きな壁となっているのは、国内世論です。昨年9月、平和安全法制が成立しましたが、日本のメディアはこぞって「戦争法案」「徴兵制の復活」という言い方で反対の世論を煽りました。

ケント だからこそ、私たちはいまメディアを変えようとしているのです。私が呼びかけ人の一人に名を連ねている任意団体「放送法遵守を求める視聴者の会」は、政治について国民が正しく判断できるように、公正公平な報道を放送局に対して求める活動をしています。昨年11月14日付と15日付の『産経新聞』『読売新聞』には「私達は、違法な報道を見逃しません」という全面意見広告を出しました。日本のマスコミは国民を誘導する義務や責任、使命があると思っているようですが、これは大いなる勘違いです。マスコミの役割は、複数の角度から正確な情報を国民に提供することであり、それ以上のことをする必要はありません。
記者会見した「放送法遵守を求める視聴者の会」の(左から)上念司氏、すぎやまこういち氏、小川榮太郎氏、ケント・ギルバート氏=2015年11月26日、東京都千代田区(三品貴志撮影)
記者会見した「放送法遵守を求める視聴者の会」の(左から)上念司氏、すぎやまこういち氏、小川榮太郎氏、ケント・ギルバート氏=2015年11月26日、東京都千代田区(三品貴志撮影)
小浜 ケントさんの活動にはほんとうに頭が下がりますし、こうした試みをどんどんやってもらいたい。インターネットを使えば、民間のボランティアでも情報発信ができる時代になっていますから、マスコミの偏向報道による歪みは、ある程度、正すことができるでしょう。

 問題なのは対外活動のほうです。くだんの「南京大虐殺文書」の登録について、中共は何年も前から申請の準備をしていた。日本の外務省はそれを知っていたにもかかわらず、何もしませんでした。

ケント 申請が認められてから、慌ててちょっと抗議しただけ。じつにお粗末な対応です。元谷外志雄さん(アパグループ代表)は「日本の正しい情報を世界に発信するための組織を政府がつくるべきだ」とおっしゃっていますが、私も同意見です。じつは、私はそういう組織に勤めていたことがあるんです。USIA(米国文化情報局、1953年設立。99年、国務省に統合、国際情報計画局に引き継がれた)という海外向けの広報活動を担当するアメリカ政府の機関があります。CIAとは違いますよ(笑)。

 USIAで私がどんな仕事をしたかというと、たとえば1975年、日本の沖縄国際海洋博覧会でアメリカ・パビリオンのガイドを務めました。このパビリオンには、表向きの文化事業とは別に「アメリカ式民主主義を世界に売り込む」という明確な国家目的があった。当時の私はそれをあまり意識していなかったのですが、7カ月そこで働いて得た給料で大学院に進み、弁護士になることができたという思い出があります。

小浜 アメリカは以前からずっとそういう活動をやっていたわけですね。

ケント はい。冷戦中、アメリカが行なった宣伝活動として、1951年に放送を開始した「ラジオ・フリー・ヨーロッパ(RFE)」は有名です。東欧の旧社会主義国に対して、民主主義の素晴らしさをアピールしていた。そのおかげで89年にベルリンの壁が崩れた際、東欧諸国はすぐさま民主主義体制に移行できたわけです。

小浜 アメリカと違って、日本には戦略的な対外宣伝活動を担う組織がありません。

ケント だから「情報はアメリカにお願いすれば無料で手に入る」と思っているんです。もっと日本政府がお金を効果的に使わないと。

小浜 敗戦以来、日本人は潜在的に対米依存で来ていますから、なんとかその壁を打ち破らないといけない。