まず「精神保健福祉センター」へ相談を


 もし、自分の周りの人が薬物依存症だとわかったら、どうすればいいか。松本部長は、各都道府県および政令指定都市にある「精神保健福祉センター」への相談を勧める。医療機関ではないが、精神科医や臨床心理士など専門資格をもったスタッフを抱える「心の問題に特化した保健所」的存在で、依存症の本人のほか、家族など周囲の人の相談も受け入れる。

「依存症は、本人よりも先に、周囲が困る病気なんです。たとえば、覚せい剤の使用を知って家族は心配するけれど、当の本人は『コントロールして使用しているから大丈夫』などと意に介さないなどがあります」。周囲の人が、治療に前向きではない本人への対処法を聞くなどの相談を続ければ、治療開始につながる可能性もある。

 松本部長によると、依存症からの回復ステップは、(1)薬を断つ、(2)欲望の分析・制御を学ぶ、(3)自助グループでの活動、の3段階。

 (1)では、とにかく原因となる薬物を断ち、体のなかから薬物を排出する。覚せい剤の場合は、幻覚や妄想を抑えるために薬物療法も用いられる。これらは、医療機関で行う。

 (2)は、たとえば、覚せい剤を注射していた人は、ミネラルウォーターを見ると薬を使いたくなるケースがあるし、疲労や空腹、寂しさも、薬を欲する要因になりえる。こうした欲望のスイッチが入る条件を知り、避けられる場合はとにかく避け、もし欲しくなったらどう気を紛らせるかを考える。医療機関、精神福祉保健センター、またはダルクなどの民間リハビリ施設で行う。

 (3)は、同じ依存症の人々が集まる自助グループ「ナルコティクス・アノニマス」で、自らの体験談などを話し合う。薬をやめたばかりの人の話を聞いて初心を思い出し、数十年薬を絶っている人の姿から自分の未来を想像するなど、他の人の話を通じて自分自身を見つめ直したり、励みを得たりするなどの効果がある。やめがたい気持ちを、安心して口に出せる場であり、正直に薬への欲望を話すと称賛される。「『薬をやりたい』という言葉は、やめ続けたいという気持ちのあらわれでもあるのです」と松本部長は話す。

もし、清原被告と友人だったら


 もし、松本部長が清原被告と友人だったらどう対処するのだろう。冒頭と同じ質問を松本部長にすると、このように返ってきた。
 「清原被告は、過去、お遍路にも行っていたと報道されていましたが、あれは薬をやめるためだったのかもしれません。そうした変わりたいと思っている時をとらえて、『あなたを心配している』という思いと、『治療にいってはどうだろうか』という提案を、穏やかに伝えます。それを、間隔をあけて何度も繰り返します。上から目線で責めてはいけません。意地になって余計に反発しますから。時間がかかってまどろっこしいですが、本人が心から変わりたいという気持ちを自発的に持つには、この方法だと思います。強引にやめさせても本人の気持ちがついていかなければ、すぐに再発するんです」

(取材・文:具志堅浩二)