ヨーロッパの王位継承は財産相続でしかない


 男子優先をヨーロッパの王室がやめる方向なので日本もそうしたらということを、外国人が思うことくらいはそんなに目くじらを立てることではない。ただ、日本とヨーロッパの君主制の性格の違いを説明し、きちんと反論すべきである。

 ヨーロッパの国王というのは、江戸時代の大名などと同じ封建領主である。したがって、領土は個人財産なのである。そこで、フランク族のサリカ法典に女性は財産を引き継げないと書いてあったことを理由に、フランク王国を継承する国では男系男子が原則とされたのである。

 この理屈は、フランスでイギリス王が女系でフランス王の孫であることを理由に王位を要求してきたときに援用されたもので、王位を失ったのちも、ブルボン家の当主は10世紀のユーグ・カペー王からいまのパリ伯爵アンリ7世にいたるまで、男子男系嫡出の原則を守っている。

 したがって、サリカ法典を継承する立場にないイギリスやスペインでは、もともと女系も女王もありだったと言うだけのことである。

 それに対して、日本の皇位は、人々のかすかな記憶のはてにある神武天皇以来、少なくとも3世紀における崇神天皇による日本国家の成立と、4世紀の仲哀天皇による国家統一からのち、男系による同一家系からしか天皇を出さないという原則をもって国家としての統一の破壊を防いできた。

 そうした正統性の維持は、もし恣意的に皇位継承原則を変えれば、より脆弱なものになることが予想される。

 それなら、男系の女帝はよいのでないかといわれれば、女帝を想定していないのは、中継ぎの天皇というものを排除した結果であって、男女差別とは関係ないといえばよい。また、伝統的に女帝は独身の女性か天皇の未亡人に限られてきたことも言えば良い。

 いずれにせよ、基本的には私有財産の継承論理であるヨーロッパの王位継承とは本質的に違うのであるし、それを丁寧に説明して、国連の委員会が不愉快な干渉をすることをやめるように説得すればいいのである。

 ちなみに、私は女帝にも女系にも絶対的に反対していないのだが、一方で、こういった継承原則は、誰にも異論をとなえにくい場合にのみ変更されるものでないと、正統性が弱くなるし、それは国会の独立と統一の維持に悪影響を及ぼすと思う。

 したがって、さまざまな努力をしても従来の原則をどうしても崩さざるを得ない場合においてのみ、許されるという立場だ。具体的には、将来において現在の皇族の男系男子の子孫がいなくなった場合に備えて、旧皇族の復帰をスムーズに行える可能性を探り準備もし(たとえば旧皇族のなかから適当な男子を宮家の継承者とするとか)、それでもうまくいかなかったときに、はじめて女帝女系は選択肢に入ると考えている。