この点に関してよく言われることだが、「わが国にも過去に女性天皇がおられたではないか」という反問について簡単に触れる。たしかに、わが国には八方・十代の女帝(女性天皇)がおられたが、すべて男系であり、しかも、これらの方々の大半は皇嗣が幼少であるなどの事情に基づく「中継ぎ」の即位であって、あくまでも一時的・例外的な存在である。また、過去の女帝は、元皇后または皇太子妃の場合、すべて未亡人であり、未婚の方は生涯独身を通され、配偶者を有されたままで皇位につかれたことは皆無であった。

 以上、ごく簡単にわが国の皇位雑承について述べてきたが、国連の勧告がいかにわが国の歴史、伝統に無知かつ非常識な代物であるばかりではなく、論の立て方自体が粗雑に過ぎよう。というのは、勧告は「女性差別撤廃」の視点から「男系男子」と「女系女子」を単純に対比させて、後者にも皇位継承権を与えよと主張しているが、「男系女子」「女系男子」については何の言及もないからである(過去の女帝の存在は全く視野に入っていない)。また、勧告の根拠となっている国連の人権宣言は「人種、皮膚の色、性別」にとどまらず、「宗教、政治上の意見」などの差別を無くすことを謳っているが、今回のような恣意的なものが過去にもあったのか、あらためて検証してみる必要があろう。
皇室典範に関する有識者会議で最終報告書を小泉純一郎首相(右)に手渡す吉川弘之座長=2005年11月24日、首相官邸
皇室典範に関する有識者会議で最終報告書を小泉純一郎首相(右)に手渡す吉川弘之座長=2005年11月24日、首相官邸 
 翻ってみれば、小泉純一郎内閣において女系導入も辞さない皇室典範改定が拙速に推進されようとしたことがあった。女性天皇と女系天皇の違いも明瞭ではない首相の独走に対して少なからぬ国民が反発したため、次の安倍首相によって法案は白紙に戻ったという経緯がある。

 その意味で今回はあまり心配しなくてもよいかもしれないが、悠仁親王の世代に男子皇族がほかにおられないという皇統の危機は厳としてある。政府は男系主義を維持しつつ、これに対処する方策(昭和22年にGHQの経済的圧迫によって皇籍の離脱を余儀なくされた方の子孫による皇籍の取得)を速やかに講じていただきたい。