拉致問題に冷たい番組の顔

 ここで、もう一人、降板する有名キャスターに触れておきたい。クローズアップ現代の国谷裕子である。93年の放送開始から23年の歴史を誇るこの番組は、反日偏向報道についてはNEWS23等と同様定評があり、BPO(放送倫理・番組向上機構)や国会等公の場でもしばしば問題とされてきた。良くも悪くも視聴率至上主義に徹してきた報ステに比べ、視聴率など気にする必要性が殆ど無い公共放送の番組である。その反日・反自民の傾向は23年間一貫し、国谷はその看板を務めてきた。

国谷裕子氏
国谷裕子氏
 番組は北の将軍様の御乱行にも極めて寛大で、当然、国谷も拉致犯罪についての批判等を控えてきた。何しろ、横田めぐみさんの拉致について産経新聞や雑誌アエラ等が伝えたのが1997年だと言うのに、クローズアップ現代が「拉致疑惑」を報じたのはやっとその3年後の2000年4月4日放送の「対話は進むか・日朝交渉きょう再開」が初めてなのだから呆れる。しかもその時の報じ方も、「ところがこの年(97年)、新潟市で行方不明になった横田めぐみさんが、北朝鮮によって拉致されたのではないかという疑惑が浮上しました」などと、それまで拉致犯罪を無視してきたことをまるで他人事のように伝えている。また、当時交渉を担当した槇田邦彦外務省アジア局長が番組中「拉致問題」と発言しているにもかかわらず、番組は一貫して「拉致疑惑」という言葉を使い続け、北の将軍様による犯罪の事実から視聴者の目を少しでも背けようという涙ぐましい印象操作に終始した。

 その一方で、国交回復を重視し、当時の外務大臣、河野洋平に、「日本周辺に国交が正常でない状況の2つの国、このまま置いておいてはいけない。何としてもきちんとした話し合いで国交を正常化したい」と語らせている。

 親北朝鮮偏重のこうした姿勢は表面的には変化を見せるものの、その核心は殆ど変わっていないのではないか。その証拠に今年1月7日放送の「北朝鮮 突然の核実験はなぜ」においても、静岡県立大学教授の伊豆見元を登場させ、「ピョンヤン市内は相当携帯電話が多い」「平壌市内のタクシーの数は相当多くて、一千台を超えている。タクシーがそれだけ増えるのは需要があるということ。ある種の豊かさを象徴する」となぜか将軍様の経済的成功をヨイショすることに余念がなかった。

 無論、こうした放送の数々はNHKと番組スタッフの制作方針に基づくものであり、その責任を国谷だけに押しつけるのは酷だろう。国谷自身は番組でも抑制的で慎重な発言をすることがほとんどであった。ただ、かといって国谷が番組が用意したシナリオを読む操り人形であるはずがない。国谷は2002年には番組制作スタッフと共同で菊池寛賞を受賞しているし、2011年度には「広範なテーマをゲストとの冷静なやりとりで掘り下げ視聴者に分かりやすく提示している」という理由で、日本記者クラブ賞を受賞している。

 キャスター降板を含めた体制変更を行うのは当然であり、視聴率重視の報ステの古舘伊知郎の方が、そこにはまだ降板を惜しむべきものがある。

 古舘伊知郎と国谷裕子が降板した後も報道ステーション、クローズアップ現代いう番組自体が無くなるわけではない。特に報道ステーションの古舘は、同時期に降板が決定しているNEWS23の岸井成格と比較にならぬほど、日本の報道番組のあり方に大きな影響を与えてきた。ポスト古舘の報道番組がどう変わるのか、今後とも継続的な監視が必要である。

 なかみや・たかし 昭和45(1970)年、北海道生まれ。豊橋技術科学大学卒業、名古屋大学大学院経済学研究科除籍。ネットメディア「週刊言志人」を主宰。韓国の反日について積極的に発言する。著書に『天晴れ! 筑紫哲也news23』(文春新書)。