ところで直近の2016年1−3月期のGDP速報値でみると、実質GDP成長率は1.7%だが、多くの論者が指摘しているように、消費には力強さが欠け、設備投資は減少傾向で不安定化している。日本経済が民間部門を中心に不調なのは統計でも裏付けられていることだ。その主因は(民間部門の貢献する)総需要が不足していることにある。そうなると政府部門がこの経済の不足を補う必要があるのだが、先の民進党の「構造改革」路線では、むしろ政府部門のリストラをすることになり、政府から流れるお金を縮減してしまうだろう。経済が低迷しているときに採用すべきものではないが、マクロ経済を見ずに局地戦に魅かれる政党の体質ゆえに、なかなか改まることはないだろう。

 他方で、自民党のほうも深刻だ。アベノミクスへの理解がかなりあると目されている山本幸三議員が会長をする「アベノミクスを成功させる会」が、消費増税を予定通りする一方で、10兆円超の補正予算を組んで増税への対応をするという提言をした。端的にいえば、これほど財務省が喜ぶ政策提言はないだろう。2014年の増税のときも補正予算を5兆円程度組んで挑んだが、その成果は悲惨であり、マイナス成長が持続し、さらなる追加緩和や補正予算が要求され、そして首相の増税延期に至った。ここが肝心だが、そのような追加対策を行ってもまったく消費が回復せずに、今日のはっきりしない景況を生み出していることだ。いいかえると、補正予算での対応は、まったくといっていいほど経済回復に効果を発揮していない。むしろ消費増税の実現を狙いたい勢力だけが、その成果を得ているだけだ。

 この補正予算での財政政策の効果がない理由は単純だ。補正予算は一回限りのものだということ。それに対して消費増税は恒常的なものだ。いま現状で5%から8%への増税による負担部分が、だいたい10兆円ある(総需要不足の額と同じ)。そこにさらに税負担が2%増えると5兆円ほど(2%の消費税収に該当)、単純に総需要は落ち込むだろう。これに対応して今年度10兆円の補正予算を行っても、翌年度もそのままこの消費税ショックは残る。

 さらに政府側が増税して事実上の緊縮財政スタンスを取っているのに、他方で日本銀行だけが金融緩和スタンスという、ちぐはぐした政策の組み合わせが金融緩和政策の効果を大幅に削減してしまうだろう。2014年以降の消費増税以降、マイナス成長と現状でも実質ゼロ成長が続く中で再度増税を行えば、マイナス成長に落ち込む可能性がきわめて高い。そしてそれは自民党の総裁任期を考えると、安倍政権が続く残り二年、現状よりも悪い事態が継続することを意味する。もちろんデフレ脱却は困難になるだろう。

 注意が必要なのは、単に消費税を8%から10%にあげるリスクだけではないのだ。すでに5%から8%へ消費税を引き上げた悪影響が、まるまる残った中で、さらに同程度のマイナスのショックをわざわざ引き起こそうとしているということに、日本経済を沈没させる深刻なリスクがあるのだ。

 いいかげんに財務省を中心とする増税勢力に国民の生活と政治がふりまわされる事態を止める必要があるだろう。