国境なき記者団はアジアが嫌い?


 両ランキングの相対的な偏りがより顕著に表れているのが、地域ごとの扱いの違いだ。国境なき記者団がフリーダムハウスと比べ特に厳しく評価したのは、もちろん日本だけではない。

 両者の評価順位の差を相対的な厳しさの指標とすると、国境なき記者団が最も厳しく評価した国はフィリピンで、以下、インド、マリ、インドネシア、ブルガリア、イスラエル、東チモール、モンテネグロ、日本と続く。アジアの国が目立つ印象だ。

 実は、二つのランキング順位の差を地域ごとに平均すると、アジア太平洋が断然、国境なき記者団が相対的に厳しい態度をとっていることが分かる。(フリーダムハウスが相対的に優しい。)

 逆に、ユーラシア(ロシア等)に対しては、フリーダムハウスの方が相対的に厳しい。(国境なき記者団が相対的に優しい。)

 米国のNGOがアジアに相対的に寛大で、フランスのNGOが旧ソ連地域に相対的に寛大だという傾向には、納得できる。政情や歴史的経緯、地政学的な関係等が影響しているのだろう。

表:ランキング順位差(国境なき記者団 - フリーダムハウス)の地域別平均

ユーラシア       -14.8位(かなり優しい)

サブサハラ・アフリカ  -7.7位(優しい)

北中南米        +1.4位(ほぼ同程度)

中東・北アフリカ    +1.5位(ほぼ同程度)

ヨーロッパ       +5.7位(厳しい)

アジア太平洋      +13.8位(かなり厳しい)

注:()内は、フリーダムハウスと比較した場合の国境なき記者団の相対評価。

 とは言え、地域ごとの平均がマイナス14.8位やプラス13.8位だと言われても、それがどの程度の偏りなのか、あまりピンとはこない。

 そこで、これを分かりやすく見るため、179カ国の順位差の分布を所与の確率分布と見なし、ランダム抽出による出現確率をシミュレーションにより概算してみた。

 結果は、ユーラシア12カ国の平均が-14.8位以下となる確率が約0.26%、アジア太平洋32カ国が+13.8位以上となる確率は約0.034%である。

 どちらも、かなり低い確率だ。

比較して分かること


 このように二つの「報道の自由度(ランキング)」を比べることで、どちらが正しいか分かるかというと、そうではない。そもそも、どちらか一方が正しいというようなものではない。

 日本に関して明らかに言えるのも、「誰がどのような方法で計測するかによって、同様の指標で72位にもなれば33位にもなる」ということくらいだろう。

 だが、身も蓋もない言い方になるが、こうしたランキングに一喜一憂するのが如何に馬鹿らしいかということだけは、分かって頂けるのではないだろうか。

【参考記事】
■日本が先進国で最下級だという「幸福度」ランクについて、みんなが勘違いしていること。 (本田康博 証券アナリスト)
■日本代表FW岡崎慎司のレスター優勝で賭け屋が大損した、本当の理由。 (本田康博 証券アナリスト)
■日本がギリシャより労働生産性が低いのは、当たり前。 (本田康博 証券アナリスト)
■軽減税率で一番損なのは誰か、分かりやすく解説してみました。 (本田康博 証券アナリスト)
■映画『マネー・ショート』を見ていて混乱するのは、「空売り」を予習したせいだ。 (本田康博 証券アナリスト)