問題生徒を排除すれば済むのか(野口)
たった一人で〝不良列車〟と対決(野々村)


野々村 どんなにいい学校だって、はみ出してしまう生徒が必ず出てくるんだから、その子たちを力ずくでも更生させる、おっかない教師が何人かは必要なんですよ。

野口 ええ。しかし体罰を封印してしまえば、先生がおっかなくなくなってしまい、生徒の暴走に歯止めがきかなくなる。そうすると、橋下徹大阪市長も自ら言っていたように、問題生徒を「クラスから放り出すような措置」が必要になってきます。果たしてそれでいいのでしょうか。

野々村直通氏
野々村 教育の放棄ですね。生徒を更生させる努力もしないで何のための教師か─。手に負えない生徒は警察に任せたらいいという意見もあるようだけれど、私は大反対。少し話はそれますが、二十数年前、私が勤務する高校の近くを走る通学列車内で、地元高校の不良集団が毎日先頭車両を占有し、巡回の車掌を転ばせたり、車内放送を勝手に流したりと、傍若無人の振る舞いで大問題になったことがありました。ほかの乗客は恐ろしくて先頭車両に乗らないから、不良どものやりたい放題です。鉄道警察官が乗車して指導しようとしても、明白な犯罪行為か公務執行妨害がなければ手出しできないので、まったく改善されない。そのことを新聞で知った私は、自家用車での通勤をやめて列車通勤に切り替えました。

野口 えっ、一人で先頭車両に乗り込んだのですか?

野々村 そういう性分なんですよ(笑)。学校が違うからといって、同じ高校生の非行に教師が見て見ぬふりは出来ませんからね。果たして先頭車両に乗り込むと、煙草の煙がモウモウと立ち籠め、リーゼント頭の不良どもが四人がけのボックス席に一人で足を投げ出して座ったり寝そべったりしている。そのうち誰かが「オッサン、乗ってくる車両が違うで」とか「エエ格好すんじゃねえ」とかはやし立てる。舐められたままでは彼らをつけ上がらせるだけなので、私は「いま言った奴は誰だ!」と一喝したうえ、だらしなく座っていた奴の足を蹴り上げ、「どういう座り方しとんじゃ、ワレ!」とどやしました。

野口 すごい。しかしそんなことをしたら、不良たちが一斉に向かってきたのでは?

野々村 呆気にとられていましたよ。こっちは血みどろの大乱闘を覚悟しているのに、向こうにその準備はない。「気」と「気」のぶつかり合いは、相手の方へ押し込んだ方が勝ちます。それから私は毎朝先頭車両に乗り込みましたが、直接向かって来ることはありませんでしたね。しかし彼らのだらしない態度が改まったわけではない。十日ほどしたある日、遠くの座席で煙が上がるのが見えました。煙草です。私は、決定的瞬間が来たと思ってその席に駆け寄り、座っていた番長格の不良に「喫煙したな」と詰問しました。しかし彼は私が来る前に煙草を窓から投げ捨てて知らん顔です。「証拠があるのかよ」と言う口から煙が吐き出されたのをみて、私は「それが証拠じゃ」と彼の顔に五、六発見舞い、首根っこをつかんで車掌室まで引きずっていった。そこで説教をしていると、仲間のツッパリが数人集まってきたんです。

野口 いよいよ乱闘ですね。

野々村 私もそう思って、「どうしたんなら! やるんかい」と立ち上がりました。しかし彼らは姿勢を正してこう言うんです。「先生、お願いがあります。このことはこいつの学校に言わないで下さい。退学になりますから」と。私は、今後は少なくとも学生服で喫煙しないことを誓わせ、学校には言わずに許してやった。それからは、彼らとの間に一定の信頼関係もできて、状況はかなり改善されましたね。

野口 いまの日本に必要なのは、まさにそういう先生ですよ。昔は学校だけでなく近所にもカミナリ親父がいて、よその子でも悪いことをするのを見たらゲンコツを食らわせていた。教育の荒廃と言われますが、そういう大人たちがいなくなったことも原因の一つだと思います。

野々村 最大の原因でしょう。