藁一本がラクダの背を折る


 ──これまでのお話をまとめると、小学校、遅くとも中学校のうちに本能を確立させる教育をしなければならない。そのためには恥と肉体的痛みを与える体罰が必要だということですね。

 戸塚 そうです。子供には恥と肉体的痛みという両方の不快感を与えてやらないといけない。動物の行動というのは、不快感が基になるんです。不快を避けて快を求めるというのが行動です。行動することで本能が鍛えられる。しかし、子供には自分で自分に不快を課すことはできません。だから大人が手伝って不快を課してやることが大切なんです。

 ──家庭教育、小中学校の教育で適切な体罰を与え、本能が確立すれば、高校では体罰は不要になるということですね。

 戸塚 ええ。本能が鍛えられていれば言葉で十分です。でもそうなっていない。桜宮高校の事件の本質はそこにあります。この事件では、体罰を与えた顧問一人が悪者扱いされていますが、それは間違いです。マスコミというのは、最後に関わったものに全責任を負わしてしまうところがある。「藁一本がラクダの背を折る」という言葉があります。藁一本でラクダの背が折れるはずがないのに折れてしまう。つまり、藁一本を加えるだけで折れてしまうほどの負荷がそれまでにかかっていたということです。つまり、キャプテンが自殺をした原因は、それまでの成育歴の中にあるということです。それを調べることもなく顧問一人に責任を押しつけている。おそらくキャプテンは体罰を受けることもなく、本能が鍛えられないまま高校生になってしまったんでしょう。戸塚ヨットスクールに来る子供の成育歴を調べてみると、どの子も体罰を受けたことがありません。彼らの脳幹をCTスキャンで調べてみると、だれもが細く未発達です。小さいころからきちんと体罰を受けていれば、うちに来るようなことはないはずです。

 ──つまり、家庭教育、小中学校の教育に原因があり、顧問の体罰がラクダの背を折る一本の藁になった。結果的に一人の高校生が死んでしまった。この事件を私たちはどう生かしていけばいいのでしょうか。

 戸塚 はっきり言えるのは、大阪市の橋下徹市長が言うように体罰を禁止することではありません。それは子供の教育を放棄したあまりにも無責任な対応です。残念ながらいまの日本では親をあてにできませんから、教師には体罰の与え方の研修を施し、子供に小学校のころからきちんとした体罰を与えてやることです。そして中学、高校の教師は、いまの子供は年寄りと同じで、蹴躓いたら骨が折れてしまうし、精神的にもポキンと折れやすいということを肝に銘じて対応するしかないでしょう。

 ──体罰を禁止している文科省に、体罰の与え方の研修なんていう発想は絶対に出てこないでしょう。いずれにしてもポイントは小学校の教育ですね。

 戸塚 そうです。小学校で本能を鍛える教育がなおざりにされているから、中学や高校で問題が起こるんです。それだけではありません。せっかく就職しても、壁にぶつかるとすぐに心が折れ、退職したり鬱病になって休職したりする。

 ──企業も新人の扱いに苦慮しているようですね。きつく当たるとすぐに「パワハラ」と非難される。

 戸塚 このままでは国がつぶれますよ。企業の教育担当者から「ちょっと怒ったらすぐ辞めてしまう。辞めたら自分の責任にされる。どうしたらいいんだ」という相談を受けますが、企業では解決のしようはありません。小学校の教育を根本から変えない限り、解決はあり得ないでしょうね。

 いまの教育は女に乗っ取られているでしょう。「かわいい、かわいい」って。事業仕分けのときに明らかになったじゃないですか。蓮舫が「コンピューター予算を削れ」と言い出した。あれが女の考えなんですよ。それを削ったら将来どうなるのか、考えが及ばない。戦略的にものを考えることができないのが女なんですよ。

『論語』には「巧言徳を乱す」という言葉があります。きれい事ばかりを言っていると人間性が低下すると。また、「小を忍ばざれば大謀乱る」という言葉もあります。いまが辛いからといって、それに耐えられなければ将来はない、という意味です。朱子はこれに「女の仁」という注釈をつけています。つまり、女はそういうものだから、男はそうあってはならないと言っている。ところが女に同調する男がいる。これが「匹夫」です。いまは日本中の男が匹夫になってしまいました。こういう事態になったのは全部男の責任なんです。情けない。男は子供に対して体罰を加える義務がある。女にやれとは言いません。

 ──わかりました。

聞き手/月刊正論 桑原聡

とつか・ひろし 昭和15(1940)年、朝鮮半島生まれ。名古屋大学工学部卒。昭和50年、沖縄国際海洋博記念太平洋横断レースで優勝、その翌年に戸塚ヨットスクールを開校。情緒障害の子供を鍛える実践の中で独自の「脳幹論」を構築する。著書に『私が直す!』『獄中記』『敵は脳幹にあり』『本能の力』など。