日本に財政危機をもたらすとしたら、経済が低迷するリスクのあるときに増税や政府支出の削減をすることによってもたらされる。もちろん常識的にみてでたらめな浪費(わかりやすくいえば、現在の都知事の公費の無駄遣いなど)は抑制する必要があるが、経済リスクのあるときこそ、政府はどんどん歳出をすべきだ。そこにためらう必要はない。

 安倍首相が記者会見時に行った問答の中では、(首相の発言がうまく推敲されてないが)10%に引き上げないのだから、それと引き上げない期間にそれと同じだけの社会保障サービスを提供することはできないと注意するとりあえずの「留保」をする一方で、世論の多くが注目している、「保育の受け皿50万人分の確保、来年度までの達成」、「介護の受け皿50万人分の整備」、「保育士、介護職員等の処遇改善」などを進めていくとしている。
美容室「MASHU」の企業内保育所(同社提供)
美容室「MASHU」の企業内保育所(同社提供)
 先に社会保障サービスの点で「留保」をつけたと首相は述べたが、この「留保」を解消する方法は、首相自身が指摘しているように、税収を大きく今後の2年半で伸ばしていく方法だろう。この連載では何度も消費税の先送りは当然で、減税こそが経済を好転させると述べてきた。そして減税こそが、税収を増やすことで社会保障の拡充にもつながるはずだ。

 だが、今回はまだ財務省や旧民主党(現在のほぼ民進党)の負の遺産である「税と社会保障の一体化」という悪しき政策を引き継いでいる。そのため減税を採りえることができない。ここに安倍政権の経済政策の限界がある。まさに「アベノミクスの失敗」ではなく、実は「民主党(≒民進党)の失敗」をいまだに引きずっているのだ。安倍首相の判断ミスは、この民主党(と財務省のコラボ)政権のときの負の遺産を過小評価していることにある。

 だが次善の政策として多年度にまたがる政府からの直接給付政策を行うことは可能だろう。その財源は外国為替資金特別会計や、先の高橋教授の新刊に解説されている財投債などを活用した資金調達などが考えられる。またさらに有効なのは政府紙幣の発行だ。具体案はいくつも存在する。消費減税とそれと協調した金融緩和政策こそがもっとも効果的だが、現状で消費減税を採用しないならば、これらの次善の財政政策をいくつも組み合わせていくことを政府にはぜひとも望みたい。

 積極的な財政・金融政策こそ、財政再建と社会保障の拡充をもたらすのだ。世論の意識から「消費増税しないと社会保障拡充や財政再建できない」という財務省が無責任に作り出した現代の神話(緊縮病)を放棄することに全力をつくすべきだ。