さらに攻撃のギアを上げるイングランドは55分、左サイドを突いたスターリッジがクロスを上げると、ゴール前の競り合いから裏に抜けたボールをヴァーディーが右足で蹴り込む。ヴァーディーのポジションは明らかなオフサイドの位置だったが、競り合いに背後に出たのはイングランド側が触ったボールではなく、ウェールズのDFウィリアムズがヘッドでクリアしようとした形だったのだ。前半はハンドを見逃した主審や副審も今回は良く見ていたと言えるだろう。

 思わぬ形から同点に追い付かれてしまったウェールズにとって痛いアクシデントが起こる。中盤でラムジー、ジョー・アレンと共に奮闘していたMFジョー・レドリーの左足ふくらはぎにスターリッジの膝が入り、強度の打撲で交替を強いられたのだ。代わりに入ったデイヴィッド・エドワーズも豊富な運動量で攻守に参加するものの、中盤で後手に回るシーンが増大した。コールマン監督は前線で奮闘が光ったロブソン=カヌを下げてスピードのある22歳のFWジョナサン・エドワーズを投入するが、最初の飛び出しが止められると試合から消えてしまい、ベイルの孤立が目立つようになってしまう。

 ラムジーの仕掛けやテイラーのアーリークロスなど、自陣から何とかゴール方向を目指すウェールズだが、新鋭のFWマーカス・ラッシュフォードを前線に加えたイングランドの圧力に押される形で、ほとんど防戦一方になった。それでも粘り強い守りで逆転ゴールだけは許さずに90分が経過。後半もアディショナルタイムが啓示された直後に最大のドラマが待っていた。ゴール前の左方向でボールを受けたスターリッジがヴァーディーに左足の縦パスを通すと、手前でパスを受けたアリが倒れながらもつないだボールをゴール前に運び、最後はDFクリス・ガンターのチャージを弾き飛ばしてゴールに流し込んだ。
【イングランド―ウェールズ】 後半終了間際に決勝点を決め、大喜びのイングランドのFWダニエル・スタリッジ(中央)=6月16日、仏ランス 
【イングランド―ウェールズ】 後半終了間際に決勝点を決め、大喜びのイングランドのFWダニエル・スタリッジ(中央)=6月16日、仏ランス   
 初戦はロシアに最後の最後で追い付かれて引き分けに終わってしまったイングランドにとって待望の勝利。しかも、途中出場のFWが結果を出す理想的な形の勝利はチームを勢いに乗せる可能性がある。しかし、そのロシアを破ったスロバキアはMFマレク・ハムシクを中心とした組織的なショートカウンターが機能しており、イングランドにとっても危険な相手だ。そのスロバキアに初戦で勝利しているウェールズにも勝ち抜けのチャンスは残されるが、ロシアに敗れれば逆転での敗退が濃厚になる。戦前からハイレベルな戦いが予想されたグループBは4チーム全てに突破の可能性が残されたまま3試合目を迎えることとなった。