移民急増に強い憤り


 なにゆえ、欧州の大国である英国でEU離脱論が高まるのだろうか。それは3年前の2013年に遡る。欧州債務危機を契機に、独仏中心のユーロ圏は、危険な債券を売って利益を上げた金融機関の規制強化を始めた。金融街シティが経済の柱である英国にとっては死活問題になりかねず、反EU感情が強まり、UKIPが保守党から支持者を奪い始めた。与党保守党内でもEU主導政治に批判的な見方が強まり、焦ったキャメロン首相が15年の総選挙で勝つことを条件に17年末までに国民投票を実施すると約束したのだった。

 実際に15年の総選挙で保守党が過半数を得て投票の流れができるのだが、発端は保守党内の内部分裂だったことは忘れてはならない事実だろう。
伊勢志摩サミットで複製された壁画の説明を受けるキャメロン英首相(左)とオバマ米大統領=5月26日午後、三重県志摩市(代表撮影)
伊勢志摩サミットで複製された壁画の説明を受けるキャメロン英首相(左)とオバマ米大統領=5月26日午後、三重県志摩市(代表撮影)
 英国は世界で最も開かれたグローバル金融市場を運営している国であり、EUに所属していることのメリットは計り知れない。それをよく承知するキャメロン首相は、EU残留を主張し続けている。だから保守党内でジョンソン氏らの離脱派が勢いを増して激しい論争が展開されたのは、「保守党内の権力闘争」と見ても間違いではない。

 離脱派が台頭する最も大きな要因が、EU内とりわけ東欧から押し寄せる移民の急増だ。ドイツと並んで欧州の大国である英国は経済運営も順調で、ドイツと同様、移民が大量に流入している。旧来のインドやアフリカなど旧植民地のほかに、ブレア元政権時代の2000年以降、EU新規加盟国から移民を積極的に受け入れてきた。安価で質の良い労働力の流入は経済的に活況をもたらした。ところが08年以降の金融危機以来、白人の労働者階級を中心に「仕事を取られた」「社会福祉制度の重荷になっている」との不満が広がった。彼らがBrexitを支持する中心となった。

 15年度の移民の純増数は33万人強で過去最高となり、英国内の一部からは制限すべきとの声が上がったが、EUのルールとの関係で政策を自由に決められない。英国は欧州の大半を国境検査なしで移動できる「シェンゲン協定」には加盟していないが、より基本的な措置としてEU離脱を求める動きが出てきた。

 ジョンソン氏ら離脱派は、「離脱後に純流入数を減らして国民の仕事を守り、福祉制度への『ただ乗り』を防ぐ」と主張。EUから抜けなければ、急増する移民を制限できないと説く。さらに、長期化するシリア内戦で増加が続く中東や北アフリカから流入する難民問題で対策が遅れていることも離脱派の反EU機運を後押ししている。

 またフランスやベルギーで移民やその子弟によるテロが続発したことも、「移動の自由は英国の安全を脅かす。EU離脱でより厳格に国境管理すべき」(ファラージUKIP党首)とEU懐疑論に拍車がかかった。