最多安打記録を更新し、日米通算4257本となったイチローのMLB通算安打はこれで2979本。あと21本となった。今季はすでに44安打。このペースなら間違いなく今季中に達成できる計算だ。

サイン会を開くピート・ローズ氏=6月11日、米ラスベガス
サイン会を開くピート・ローズ氏=6月11日、米ラスベガス
 《3000本安打クラブ》と呼ばれる、3000本達成者のランキングを見ると、1位ピート・ローズ、2位タイ・カッブ、3位ハンク・アーロン、4位スタン・ミュージアルと、歴代のスーパースターたちの名前が並ぶ。これまでの達成者は29人。29位ロベルト・クレメンテ、28位アル・ケーライン、27位ウェイド・ボックス、26位ラファエル・パルメイロ、25位ルー・ブロックと、ここに並ぶ選手もレジェンド立ちばかり。イチローがあと21本打てば、30人目のメンバーとなり、こうした歴史的なヒーローたちの列にまた加わることになる。3000本安打は、MLBだけで記録されたものだから、今回のように水を差される心配もない。イチロー自身もそれを知っているから、3000本を打ったとき、やはりクールに振る舞うのか、茶目っ気を出してはしゃぐのか、そこにイチローの本音が見える気がする。

 さて、42歳になってなお、これだけのパフォーマンスを維持するイチローを支える秘密は何なのか?

 今季、MLB通算500盗塁の記録も達成したように、まだ快足が衰えない。足の速さや筋力は年齢とともに衰えるといわれるが、イチローはその常識を超えて、活躍し続けている。それをどう理解すればよいのか?

 日ごろの節制と鍛錬の賜物であることは多くの人たちが感嘆するとおりだろう。私は少し見方を変えて、「筋力が衰えないから」でなく、「筋力に頼っていないから」という側面もあるのではないかと指摘したい。イチローがこれほどの打力、走力を発揮しているのは、筋力にあまり頼っていないからだと考えた方が合理的だ。筋力を使わずに打つ、走る方法をイチローは身体でつかんでいるのではないか。だから、年齢とともに衰えるはずの筋力の低下に影響されることなく、記録を積み上げている。

 ひとつの根拠として、視力をあげておく。「イチローは目がいい」と多くのファンが信じているが、実はイチロー選手の視力はシアトル・マリナーズに入団した時点で0・5程度だったという。コンタクト・レンズで矯正するよう球団の医師から勧められたが、イチロー選手はこれを断り、裸眼でプレーする道を選択した。イチローは「目がいい」から打てるので、「ボールの見方がいい」から打てると考えを変えた方がイチローの実体に近づけるだろう。

 筋力に頼らない打法、走法、そんな見方でイチローのこれからの活躍を見つめるのもきっと興味深いはずだ。