習近平は言っていることとやっていることが違う


 この、2015年9月3日に北京で挙行された軍事パレードは、中国国外から観る者にとっては矛盾を孕むものだった。中国は、言っていることと、やっていることが違うだろう、ということである。

 軍事パレードに先立つ演説で、習近平は、「中国は永遠に覇を唱えず、永遠に拡張しない」と述べた。中国の平和的台頭を主張しているのだ。『2015年国防白書「中国の軍事戦略」』の前言にも全く同様の表現があるが、実は、この表現は新しいものではない。「中国は永遠に覇を唱えず、永遠に拡張しない」というフレーズは、2002年の中国共産党第16回全国代表大会において江沢民元主席が使用して以降、胡錦濤前主席も使い続けてきた。

 しかし、これまでの中国の南シナ海における行動等を見て、これを簡単に信じる国はない。最近でも、中国は、南シナ海においてサンゴ礁を埋め立てて人工島を建設し、軍事施設と思しき建造物の建設を進めている。

 さらに、このフレーズは、軍事パレードの場で述べられたのだ。そもそも軍事パレードは、軍の威容を示すものである。しかも、中国が、今回の軍事パレードにおいて、米国に対抗できる能力を誇示したことは明らかだ。軍事パレードにおける兵器の披露の仕方が、米国を意識したものだったからである。

 航空部隊を率いたKJ-2000は、南シナ海や東シナ海で活動する米軍機を監視し、戦闘機を管制する。1機300億円とも言われ、5機しか装備されていないと言われる。一方、KJ-500は価格が安く、大量生産が可能だとされる。機数が揃えば南シナ海等における監視能力が飛躍的に向上する可能性がある。

 また、東風10(長剣10から改名された)巡航ミサイルを発射可能なH-6K長距離爆撃機は、グアム島の米軍基地を制圧できると中国は宣伝している。この東風10巡航ミサイルは、射程1500~2500km、50~150mの巡航高度を、マッハ0・75の速度で飛行する。中国は、このミサイル一発で、7000~1万トンのミサイル巡洋艦を海底に葬ることができると豪語する。東風10は、本来、DF-21Dと並んで、対艦ミサイルとして開発されたミサイルなのだ。

 J-15戦闘機は、わざわざ、空母着艦時にアレスティング・ワイヤーに引っ掛けるフックを下ろして飛行した。空母艦載機であることを誇示するためである。中国が、正規空母を運用できることを示したかったからだろう。J-15は、中国人民解放軍海軍の策定した中国の空母建造計画のために開発された艦上戦闘機である。本機は、ロシア製の
Su-33をベースに用い、国産の兵装とレーダーを装備している。

 中国は、本来、空母艦載機として、ロシアからSu-33を購入する希望を持っていたが、中国のJ-11がSu-27から技術を無断コピーし、知的財産権協定に違反しているとの理由で、ロシアが中国へのSu-33の提供を拒んだのである。そのためSu-33の試作機を、苦労してウクライナから入手したとも言われる。

 そして、弾道ミサイル群も、上記の航空機群とともに、西太平洋およびアジア地域における米軍の活動を無力化できることを誇示する、バラエティーに富んだ陣容となった。射程1000kmとされるDF-16は、第一列島線をターゲットにしていると言われる。沖縄から南西諸島に所在する米軍基地や、自衛隊基地を狙うと言うのだ。

 DF-21D対艦弾道ミサイルも披露された。中国の対艦弾道ミサイル(ASBM:Anti-Ship Ballistic Missile)は、単純な放物線を描いて飛翔するのではなく、最終段階で飛翔経路を変えられるという。各国は、その技術に疑念を抱きつつも、その能力を否定することもできない以上、これに対処する方策を考えなければならない。