この技術が確立しているとすれば、現有の弾道ミサイル防衛(BMD:Ballistic Missile Defense)で撃墜することは極めて難しい。BMDは、放物線を描いて飛び、最終段階では高速で自由落下する弾頭を破壊するようプログラムされているからだ。現在の武器は、砲弾やミサイルの弾着の精度を上げるため、コンピューター・プログラムに頼っている。弾道ミサイル撃墜も例外ではないのである。DF-21Dが「空母キラー」と呼ばれる所以である。中国指導部は、米国の空母打撃群が中国に進攻して来ても、次のDF-26による攻撃を含め、中国本土から1500~3000㎞離れた海域で廃滅させる能力を示したかったのだ。

 中距離弾道ミサイルDF-26の射程は、3000~4000kmと言われ、日本、韓国およびグァム島に所在する米軍基地をすべて射程に収める。また、今回の軍事パレードでは「対艦弾道ミサイルである」と紹介された。

 そして、中国では、米国と対等な立場を示すものは、やはり核抑止力だと認識されている。大陸間弾道ミサイル(ICBM:Inter-Continental Ballistic Missile)である。

 中国の大陸間弾道ミサイルの射程は、米国のほぼ全土をカバーできると言われる。TEL(輸送起立発射機)に搭載された、巨大なDF-31Aは、ゆっくりと、各国首脳および代表団が居並ぶ観閲台の前を通り過ぎた。
天安門前をパレードする対艦弾道ミサイル=2015年9月(ロイター)
天安門前をパレードする対艦弾道ミサイル=2015年9月(ロイター)
 その後ろを、DF-5B大陸間弾道ミサイルが、トレーラーに搭載されて行進した。DF-5Bは、ミサイル自体は新しいものではなく、液体燃料を使用しているが、多弾頭化され、1基のミサイルに3発の核弾頭を搭載できると言われている。

 古い弾道ミサイルが液体燃料を使用しているのは、燃焼をコントロールしやすいからである。弾道ミサイルは、打ち上げる角度と燃料の燃焼による推力によって、その弾道、すなわち弾着点が決まる。野球のボールを投げるときに、投げる力と角度によってボールの落下点が決まるのと同様である。いったん発射された弾道ミサイルは放物線を描いて飛び、基本的には弾道を変えることはできない。

 燃料の燃焼がコントロールできず、計算されたとおりの推力が得られなければ、狙ったところに落とせないということである。以前は、固体燃料を安定して燃焼させ一定の推力を保つことが技術的に難しかった。そのため、特に大きな推力を必要とし、大量の燃料を燃焼させなければならない大陸間弾道弾には液体燃料が使用されることが多かった。

 しかし、液体燃料には欠点もあった。品質を保つのが難しく、ミサイルに搭載したままにすると燃料が劣化してしまうからだ。そのため、ミサイルを発射する前に燃料を搭載する必要があった。ミサイル発射の兆候を晒してしまうということである。ただ現在では技術が進歩し、固体燃料を安定して燃焼させることができるようになり、固体燃料を使用した大陸間弾道ミサイルが多く登場している。一方で、液体燃料の品質維持もできるようになり、発射直前に燃料を搭載する必要がなくなっている。双方の利点と欠点は、さほど明確ではなくなっているのだ。