狡猾な中国を批判した理事国


 そして、中国の主張が決議案に盛り込まれないまま二月二日の理事会が開かれた。出席したのは、ベルギー、ボリビア、イギリス、中華民国、フランス、イランなど十五カ国。議題は四〇一三、中華民国政府によるアピール・議事運営手続きの問題である。
顧維鈞中華民国代表の対日行動要求が無視された国際連盟本部。現在は国際連合のジュネーブ事務局になっている
顧維鈞中華民国代表の対日行動要求が無視された国際連盟本部。現在は国際連合のジュネーブ事務局になっている
 議事録を見ると、理事会前の四国会議で、決議案の草案がすでに固まっており、それをめぐって各国の代表が不満や異議を唱えていることが分かる。
 議長 「―議事手続きについて何か意見がありますか?」

 ポーランド代表 「私は決議案の投票を棄権すること、その際に棄権の理由を説明することを提案しなければなりません」

 ペルー代表 「私もまた、私の投票について公開で説明することを提案します」

 中国代表 「…この議事手続きの問題は公開の会議ではなく、非公開の場で話し合うようお願いします(略)」

 ペルー代表 「全世界の報道陣がこの問題に寄せている注目度のことを考えた場合、議事手続きの問題は公開セッションで議論されるべきだと思います。(略)中華民国代表を含む理事会の諸メンバーによって起草された提案の知らせを、私は数日前に受けました(略)」

 エクアドル代表 「報道されているステートメントについて、理事会のどのメンバーも賛成していないと私は思います」

 ペルー代表 「…理事会は予備草案を検討するために、数日前に会合することもできたはずですが、そうではなくて、私たちは間際になっていくつかの点で曖昧な、またいくつかの点でそれに内在する不明瞭さの故に気がかりなところが残る草案を与えられました。昨日、私たちが文言のすべての明細については合意に達しなかったことを、理事会は知っています。それらの理由から、遺憾ながら、私はこうした態度を取らねばなりません」

 中国代表 「…私は決議の作成者の一人として引用される名誉に値しません。決議は意見の交換の結果で、理事会による決定の基礎としてできあがるものです。私は討議に参加しました(略)」
 そして、英仏の反対で修正された決議案が議長によって報告された。
 議長 「本議題に関して作成した決議案の文言は次のとおりです」

 『本理事会は、極東における情勢を考慮し遺憾ながら、中国における敵対行為は継続し、本理事会の前回会合の時よりも激化したと認め、政治的また経済的復興期にある中華民国政府の努力と成果に鑑(かんが)みれば、この状況悪化を一層残念と認め、総会は、一九三七年十月六日付決議により、中国に対する道徳的支援を表明し、国際連盟加盟国が中国の抵抗力を弱体化し、またそれにより現在の紛争にあってその困難を増幅する効果をもつ、いかなる行動も慎み、またどのようにして諸国が個別に中国に支援を提供できるかを検討すべきであることを勧告したことを想起し、上記決議の文言に対してもっとも深甚な注意を払うことを国際連盟に求め、この状況に特別の関心を有する理事会に出席する諸国が、他の同様の関心をもつ諸国と協議して、極東における紛争の公正な解決に寄与するさらなる措置の可能性を調査する機会を失わないと信じる』
 この決議案が提案された後、ポーランド代表は「私は評決を棄権することを提案します」とし、ペルー代表は「決議案を作成した国が、決議案作成にあたり、他国の日常的な参加もなく、日々の意見の交換も行わなかったという事実にあります。参加や意見交換は、決議の正確な範囲を理解するための欠かせない前提条件です。(略)私は私が言及した手続き上の理由により、棄権する意思を表明いたします」として、棄権した。

 一方、フランス代表は、決議案作成に参加したことを自ら明らかにして「フランス政府の考えや憂慮を誠実に反映して、弾力的なものとなっています」と述べ、決議案に賛成している。