辞任で本当にホッとしている人たち

 
 多くの都民、いや日本国民全体が舛添辞任を「よかった」と思っているかもしれない。「やっと辞めてくれた」とホッと胸を撫で下ろし、「今度はもっとまともな人を選ぼう」と思っているかもしれない。

 しかし、舛添辞任を本当に「よかった」と思っているのは、都民・国民ではなく、都議会の与党、そして都の役人たちである。もっと大きく言えば、日本の政治・官僚支配システムのなかで、税金で生きるすべての人々である。

 なぜなら、舛添氏は、都知事としてほぼなにもせず、「素晴らしき遺産」を守り通してくれたからだ。これは、世界の民主制国家のなかで、どこの国にも見られない世界遺産に匹敵する「日本遺産」である。

 では、舛添氏が守り通し、残していった遺産とはなんだろうか? 以下、列記してみよう。

視察という「外遊」には常にファーストクラスで行き、宿泊は5つ星ホテルのスイートでOK(「事務方が用意してくれた」のだから問題なし)。

公用車は「走る知事室」なのだから、どこに行こうとかまわない(週末別荘通い。家族といっしょに巨人戦観戦もOK)。

「視察」と言えば、趣味の「美術館めぐり」をいくらでもやっていい。

正月の家族旅行を「会議」にしてしまえば、旅行代を政治資金でまかなっていい。

「クレヨンしんちゃん」も政治資金で買っていい。

「外国からの賓客にプレゼントする」とすれば、政治資金で趣味の美術品をヤフオクで買っていい。

「中国服」を書道用に使うという画期的な着用方法がある。

「第三者の厳しい目」として、ヤメ検弁護士を使えば「関係者は関係者」と言ってくれる。

 まだまだいくらでも「遺産」はあるが、この辺にしておこう。要するに政治家は、税金、政治資金を好きなように使えるということである。


政治資金規正法は「公私混同法」


 ところで、舛添氏はどうして、このようなことをしたのだろうか? どんなに優秀、頭がいい人間でも、このような素晴らしい(=セコイ方法)は思いつかない。いずれも、優秀な学者アタマでは考えられない方法である。

 そこで言えるのは、彼は政治家になり、先輩政治家たちを見て、こうした方法を学んだのではないかということだ。そうでなければ、「クレヨンしんちゃん」を政治資金では買うはずがない。1件あたり3万円程度の美術品を外国の賓客にプレゼントしたら笑われるはずなのに、それを堂々と買うわけがない。

 その意味で、彼の学習能力は極めて高い。

 つまり、政治資金規正法が主として献金の授受に関しての規定であり、その使用法については特段の記載がない「ザル法」であることを知り、ほかの政治家がどのようにそれを活用しているのかを学習したのだろう。

 その結果、この法律は「公私混同法」であることを早くから見抜いていたのだ。

 舛添氏は素晴らしい「語録」を残している。

「政治家というものは私利私欲を離れて公のために尽くす気持ちがなければ、政治家になるべきでない」は、そのなかでも筆頭に挙げられるものだ。

 しかし、彼は政治家になって、これが「戯言」にすぎないことを、身を持って知ってしまった。