韓国では世代交代が進んでいない


――日本のシーレーン(海上輸送路)上にある尖閣諸島の領有権問題に関して、韓国はどういった立場なのでしょうか。

ユー たんなる日中間の火種としてしか見ていません。韓国人は政治問題を、個人の政治家に対して抱く感情とごちゃ混ぜにして論じる傾向があります。「尖閣諸島は日本の領土だ」と主張する日本政府は、尖閣諸島の買い上げを表明した石原慎太郎氏と同一視されています。

――韓国人にとって石原さんは、日本の極右、「韓国の敵」なんですね。

ユー 本来、韓国にとって尖閣諸島の領有権問題は対岸の火事ではないのです。たとえば、これから韓国と中国のあいだで火種となりうるのが「離於島(中国名・蘇岩礁)」の領有権問題です。離於島は、韓国で「伝説の島」と称される東シナ海の暗礁です。海中に没し、厳密には島ではないため、中国と韓国の双方が「領土」とはせず、これまで大きな波風は立ちませんでした。しかし尖閣問題の余波で中国がにわかに管轄権を強調したことが引き金となり、韓国世論が中国の「海洋覇権」に警戒感を露わにしはじめました。

 離於島は、中韓の排他的経済水域(EEZ)が重なる海域にあたります。韓国は中国に対し1996年以来、EEZの画定交渉をしてきましたが、交渉はまとまらず、この暗礁がどちらのEEZ内にあるかは未確定です。

 これまでは朴大統領が中国に斟酌して領有権を主張しませんでした。しかし、次の政権も含めて長期的に韓国が頭を悩ます問題に発展する可能性を孕んでいます。

――領有権といえば竹島の問題もありますが、日韓の協力体制が進まないのはやはり歴史問題が大きな障害ですか。

ユー はい。そして、互いに引くに引けない状態が続く歴史問題や領土問題に終着点はありません。そこで、現実的な打開策を見出すための前提となるのが政治家の世代交代です。

 1960年代から2000年代まで、日本の政治や経済を牽引していたのは団塊世代の人たちでした。世界的に見ても、一世代がこれだけ長い期間イニシアティブを取り続けた例はありません。そして団塊世代は、韓国との良好な関係を重視する世代だったと思います。

 しかしいまや時代は変わり、日本の政治の中心は安倍首相と同年代のポスト団塊世代に移行しました。安倍首相は前政権までの外交姿勢にきっぱりと区切りをつけました。これほど大胆な舵切りは、1987年の民主化を担った386世代を政権の中枢に引き入れた盧武鉉元大統領でもなしえなかったことです。

 本来、この段階で国と国との関係性もリセットするべきなのですが、残念なことに韓国では世代交代が進んでいません。交渉テーブルに座る者の歴史観や時代感覚が異なれば、いわば大人と子どもの話し合いに終始してしまう。これでは交渉どころではありません。今後、政治交渉における世代間ギャップの軋みはより顕著になるでしょう。

 やはり勝負は朴槿惠大統領の次の政権です。韓国の政治家の世代交代が完了して初めて、新しい世代間での建設的な交渉が実現すると思います。