最高の入りになったはずが、最も悪いタイミングで追い付かれ、試合の波を逃してしまったイングランドに追い打ちをかけるアイスランドの逆転ゴールは12分後に生まれた。常にボールサイドに対して数的優位を作り、球際でタイトなコンタクトを実行するアイスランドは自陣左からのグンナルソンのロングスローをDFガリー・ケーヒルがクリアすると、こぼれ球を起点にダイナミックなパスワークでイングランドのゴールに襲いかかった。

 DFラグナル・シグルドソンのサイドチェンジから、左サイドで受けたFWコルバイン・シグトルドソンがMFビルキル・ビャルナソンとのパス交換で中央に流れてグンナルソンにボールを戻す。そこから右サイドに大きく展開すると、サエバルソンがスターリングを引き付けてMFヨハン・グドムンドソンにリターンパス。そこから前に出て来たDFダニー・ローズのタックルをかわし、左足でバイタルエリアのMFギルフィ・シグルドソンにパスが通る。

試合に敗れ仲間を励ますルーニー(AP)
試合に敗れ仲間を励ますルーニー(AP)
 そこからFWヨン・ダディ・ボドファルソン、シグトルソンとつなぎ、ケーヒルのタックルをかわして右足でミドルシュート。グラウンダーの鋭い弾道はGKジョー・ハートの伸ばした手を弾き、ゴールに吸い込まれた。この時点で残り時間は70分以上あったが、ここからアイスランドが鉄壁の守備を見せ、逆にイングランドは連動性を欠いてしまい、単独の仕掛けなど強引な攻撃が目立つようになる。しかも、アイスランドは自陣に引いて守るだけでなく、ボールを持てば効率よくサイドでボールを運び、時にイングランドを上回るチャンスメークで相手の攻勢をそいだ。

 イングランドのロイ・ホジソン監督は後半の立ち上がりから中盤にMFジャック・ウィルシャーを投入して効果的な縦パスの起点を増やそうとするが、ギルフィ・シグルドソンとグンナルソンのプロテクトするアイスランドのディフェンスはなかなか崩れない。60分にはレスターのプレミアリーグ優勝を牽引したFWジェイミー・ヴァーディーを入れて前線のターゲットを増やすものの、ラグナル・シグルドソンを中心としたアイスランドの守備は堅固さを強め、強引に枠内を襲ったシュートも守護神ハルドルソンに阻まれた。

 最後はついにルーニーを下げて18歳の新鋭ラッシュフォードに望みが託されるが、イングランドが怒濤のパワープレーを見せた後半アディショナルタイムもアイスランドのゴールは破られることがなく試合終了した。走行距離でもイングランドを4キロも上回ったアイスランド。大会前の下馬評から見れば“番狂わせ”の結果だが、チームとしての高い結束力と戦術クオリティーで勝ち上がってきた“北の小国”による必然のジャイアントキリングだった。