チャンピオンデータは科学か


 他のワクチンでも強く光っている写真がたくさんあったのに、池田教授は、子宮頸がんワクチンでよく光っている写真と他のワクチンで光っていない写真が組み合わさったスライドだけを発表した。しかも、この発表データは、写真もグラフもサンプル数1。つまり、数いるネズミのうち、仮説にとって都合の良い、たった1匹についてのデータ=チャンピオンデータであった。

 チャンピオンデータとは、言ってみれば「100人に1人」しか成功しないダイエット法で減量に成功した一個人のデータや写真のようなもの。そこには再現性も統計的意味もない。チャンピオンデータは、科学ではなく宣伝である。

 そのため、科学で「ネズミ1匹」の解析データが示されることはないし、やってはならない。NEWS23での池田教授の言葉を聞いた視聴者は、誰もが「子宮頸がんワクチンを接種したマウスの脳だけに異常が起きていた」と理解したはずだ。

 しかし、この実験では、ワクチンがワクチンを打ったマウスの脳に障害を起こしていたことにはならない。ましてや、少女たちの症状と結び付けて考える根拠はひとつもない。

 A氏とのやり取りは次の通りだ。
 
 筆者「TBSのニュース23で池田先生が何て言ったかというのを読み上げると、明らかに脳に障害が起きていて…」
 A氏「起こらない!」
 
 筆者「こういう脳障害が起きている患者の共通した客観的な所見が提示されている」
 A氏「ない!ですね。ぜんぜん」

 筆者「今後、仮にこの実験が完成したとしても、子宮頸がんワクチンを打った少女の脳に障害が起きている話と結びつけるには飛躍がありますよね」
 A氏「飛躍はあるし、リンケージ(関連)はないですよ、何もないですよ!」

 筆者「子宮頸がんワクチンによってできた自己抗体が、ワクチンを打ったマウスの脳に沈着したということにもならないですよね?」
 A氏「その証拠は取れていません」

明らかな意図


 池田教授がいいデータを出せと指示したのか。A氏自らがチャンピオンデータを出したのか——。A氏によれば、実験について池田教授に説明したのは昨年12月28日の1時間ほどの一度きりだという。
 A氏とは、池田教授への説明に使ったという、A氏の立場を証明することになるオリジナルのスライドを見せてもらう約束で別れた。

 しかし、「今日中に送ります」と言ったスライドは翌日になっても届かず、リマインドのメールを送っても返事がない。非通知でかけた電話にやっと出たが「確認して送るところです」と言ったきり、連絡がつかなくなった。最終的には、編集部からの電話を「出す必要ない」とだけ言って一方的に切ったという。

 A氏は、N=1であることも、脳切片と血清の出所が別であることも、他のワクチンでも緑色に染まることも、問わなければ答えなかった。ではなぜ「飛躍があり、リンケージもない」とA氏自らが認める実験が、計画され、実施されたのか。そして、何百万人という人が視聴する主要ニュース番組を通じて、池田教授があのような発表を行ったのか――。

 不自然な実験内容、池田教授のテレビでの表現、すぐ出せるはずのオリジナルスライドを一切出さなかったことなどを総合すると、これは「子宮頸がんワクチンを打ったマウスの脳に障害が起きた」と言うために造られた実験であり、“捏造の意図”があったと結論付けざるを得ない。