当事者たちに反省なし


 池田教授の言動は、アカデミアに不正問題に迅速に対応する制度がないことや、科学が分かりにくいことを上手に利用した、科学者として許しがたいものである。このような医師・研究者を、雇用している信州大学や、研究班長に指定して税金を使って研究を行わせてきた厚生労働省は、調査委員会を設置して、直ちに調査に入るべきだ。

 ウェブへの転載にあたり、A氏に追加の質問と、抗議や加筆すべき点を訊ねるメールを送った。A氏からの返信は以下のとおりだ。

村中先生

御世話になっております。

私といたしましては、先日御会いした際、御話しをした内容が真実で、だいたい全てです。信州大学医学部産婦人科講座といたしまして、「子宮頸がんワクチンの接種」には賛成です。ただ、ごく一部で、同ワクチン接種後に、副作用が認められます。これが、何かしらの遺伝的素因が原因かもしれません。

ですので、自己免疫疾患の素因を有するマウスを用いて検討を行っておりますが、まだ、パイロット実験の状態で、有意差を認められるような結果は得られていません。将来、何かしらの情報が得られれば、医療機関で同ワクチン接種の際、付加コメントが出来れば良いかと思っています。宜しく御願い致します。

A

 Wedge編集部は7月号発売直前の6月17日、厚労省担当課に記事の内容を説明しに行った際に、池田修一教授から厚労省に対し電話が入「ウェッジは人権侵害である」と池田教授は言ったそうだ。

 編集部は、「このような方が副学長、医学部長の任にあることは大きな問題であると考えます。大学として何らかの措置をとられるべきではないかと存じます」との手紙を添えて、信州大の学長宛てにWedge7月号を6月17日午前着の宅配便で送付している。学長に呼び出された池田修一教授は、このような手紙を学長に送ることは人権侵害だと言っているらしい。

 記事で問われた実験内容については一切のコメントなく、人権侵害だという怒りの電話をなぜか厚労省にかける池田修一教授。何が人権侵害なのか不明だが、万が一そうだとしても、言うべき相手は編集部だろう。

 編集部は、池田修一教授にも同日着でWedge7月号を届けている。「先日は当方の取材に対して誠実なご回答がいただけませんでしたが、どういうお考えでこのようなことをなさったのか、ぜひ改めてきちんとお答えいただけないでしょうか」という手紙を添えて。

 まもなく1週間が経つが、池田教授からリアクションはない。

 それぞれの立場と動機から、捏造に手を染める研究者たち——これが国費を投じた子宮頸がんワクチン薬害研究班の実態だ。子宮頸がん罹患リスクを負ったワクチン未接種の少女たちとワクチンに人生を奪われたと苦しむ少女たちの未来は、こんな大人たちの手に委ねられている。

むらなか・りこ 医師・ジャーナリスト。東京都出身。一橋大学社会学部・大学院卒、社会学修士。その後、北海道大学医学部卒。WHO(世界保健機関)の新興・再興感染症対策チーム等を経て、医療・科学ものを中心に執筆中。京都大学大学院医学研究科非常勤講師も務める。