しかし、学校でうまくいかないのは、果たして子宮頸がんワクチンを打ったせいなのか。「高次脳機能検査で脳の処理速度が落ちている」と言われれば、脳の異常が客観的に評価されたかのようだが、そうではない。池田教授が高次脳機能障害を疑うとしている少女たちの症状は、次のスライドにあるように、勉強の内容を記憶できない、計算が遅くなった、昼過ぎまで起きられないといった、あくまでも自覚的な訴えだ。
 「脳障害」としている21例のうち、画像検査で異常が見られたのは結局、何例だったのだろう。発表では明らかにされていない。その上、患者の共通項としている高次脳機能検査の処理速度は、被験者の意欲にも左右される。末梢性の自律神経障害では説明できない学習障害があった症例41例のうち、なぜその一部の21例のみ「脳障害」となったのかも不明だ。

 池田教授は先ほどの症例紹介に続けて、このような発言をしている。

「他のこの年齢で、麻痺だとか高次脳機能障害を訴えている他の病態と区別できるのかということなんですが、この方もワクチンを打って数年たって突然足のけいれん、歩きにくいというようなことで、子宮頸がんワクチンの副反応じゃないかと受診しています。こういう子が高次脳機能検査をすると、全般的に悪いんですね。そして脳の画像を撮ってみると、脳の画像上、どっか機能が落ちているところはないとなって、これは、高次脳機能検査と脳画像から、これはやっぱりワクチンの障害ではないという判断になります」

 他の病気との鑑別基準を話すとしていたのに、なぜかワクチンの因果関係を説明したことになっている。これでは、脳障害の症例定義もワクチンとの因果関係も説明していない。

身体表現性障害との区別は?


 現在発売中の月刊Wedge2016年4月号掲載の“暴走する大人と沈黙する子供たち 子宮頸がんワクチン「被害」からの解放”にも詳しく書いているとおり、脳や神経そのものに異常がなくても、脳や神経の“働き”に異常が生じる「身体化」あるいは「身体表現性障害」という病気がある。心の病気という誤解があるが、恐怖、不安、痛み、怒りなどの様々な情動がきかっけとなっておきる、身体の病気である。身体化によって、先に示した「脳症状のまとめ」というスライドの最後に出てくる「奇異な麻痺や不随意運動」が起きることも、けっして稀ではない。池田班は、ワクチンと関連していると思われる脳障害や高次脳機能障害と身体表現性障害をどう区別しているのだろうか。