ポーランド系移民がヘイトの標的に


 残留派と離脱派が最後まで拮抗した状態で23日に行われたイギリスのEU離脱を問う国民投票。開票直後は残留派のリードが伝えらえたが、離脱派が徐々に勢いを見つけ、最終的に離脱派が約1741万票、残留派が約1614万票という結果に。120万票以上の差をつけて離脱派が勝利し、イギリスはEUからの離脱を選択した。国民投票の結果はイギリス国内にも社会的な分断状態を生み出し、欧州各国にくすぶる反EU気運が高まる可能性も懸念されている。

 離脱派が国民投票で勝利を収めた直後から、イギリス国内ではポーランド系を中心とする東欧出身者に対するヘイトクライムが前月比で50パーセント以上増加。ロンドン西部ハマースミスにあるポーランド社会文化協会の建物では、壁に書かれた差別的な落書きが26日に発見され、地元の警察当局はヘイトクライムとして捜査を開始している。また、イングランド東部のハンティントンという町でも国民投票後に英語とポーランド語で「ポーランド人はいらない」と書かれ、ラミネート加工まで施されたカードが多数ばらまかれる事件も発生した。「雇用を奪われた」と憤るイギリス人には申し訳ないが、勤勉なことで知られるポーランド人を諸手を挙げて歓迎したのはイギリス社会ではなかっただろうか?

ユーロ2016 ポーランド-ウクライナ。先制ゴールを決めて喜ぶヤクブ・ブワシュチコフスキらポーランドの選手=6月21日
ユーロ2016 ポーランド-ウクライナ。先制ゴールを決めて喜ぶヤクブ・ブワシュチコフスキらポーランドの選手=6月21日
 ポーランドは決して安価な労働力の供給源だけではない。前述のヨハネ・パウロ二世だけではなく、様々な分野でポーランドは世界に名を残す人材を輩出してきた。科学の分野ではコペルニクスやマリー・キュリー。音楽ではショパン、映画ではワイダやポランスキーといった名監督がポーランド出身だ。フットボールの世界でも、過去には俊足ウイングのラトーや司令塔のデイナ、80年代前半にイタリアのユベントスで活躍したドリブルの名手ボニエクといった面々が多くのフットボールファンを魅了した。攻撃陣に世界的名手の多いポーランド代表のDNAを継ぐのは、フォワードのロベルト・レヴァンドフスキだろう。

 ワルシャワ生まれの27歳のストライカーは、2010年にドイツのボルシア・ドルトムントに移籍して以来、ブンデスリーガで数多くのゴールを記録してきたが、2014年に加入したバイエルン・ミュンヘンで得点力がさらに覚醒。2015/2016年シーズンには、32試合のリーグ戦出場で30ゴールを挙げている。昨年9月22日に行われた対ヴォルフスブルグ戦では、途中出場にもかかわらず、8分59秒の間に5ゴールを叩きだした。最初の3ゴールにかかった時間はわずか4分。これはブンデスリーガの最短ハットトリック記録となっており、同様に途中出場の選手による5ゴールもブンデスリーガ史上初となるものであった。

 大国に挟まれていなければ、ポーランドはもっと発展していたかもしれない。それはフットボールも同じだ。1938年のワールドカップと同じく、今回の欧州選手権もフランスで開催されている。ポーランドの粘り強さと攻撃力をポルトガル戦で目の当たりにすることを、世界中の「ポーランド人」が期待している。