魚とシュリンプ料理を所望


 銃撃戦が鎮まった後、人質にとっては本当の恐怖が始まった。外国人はイタリア人グループ、日本人グループなどとテーブル別に分けられた。米国人、インド人もいた。地元のメディアによると、襲撃犯は人質にコーランの一節を暗誦させ、できない者は刃物で惨殺した。

 バングラデシュ軍のスポークスマンは「ほとんどの犠牲者が鋭い刃物で残虐に殺害された」と述べている。過激派組織「イスラム国」(IS)の関連通信社がネット上に掲載した被害者の写真はこうして殺された外国人のものだったと見られる。

現場に向かう車両の中で待機するバングラデシュ軍特殊部隊(SWADS)の隊員=2016年7月2日、ダッカ(AP)
現場に向かう車両の中で待機するバングラデシュ軍特殊部隊(SWADS)の隊員=7月2日、ダッカ(AP)
 バングラデシュ従業員らは2日の午前1時半過ぎ、襲撃犯によって再びトイレに閉じ込められた。従業員は同1時44分、レストランの外にいるいとこに携帯からメールし、軍が救出作戦を仕切っていることを知った。従業員は狭いトイレに閉じ込められて窒息することを恐れ、トイレの壁を破壊して救出してくれるよう訴えた。

 襲撃犯は残りの人質らに、お茶とコーヒーを出すようレストランのスタッフに言いつけた。そして同午前3時半、ラマダン(断食月)の1日の始まる前の食事を出すようキッチン係に要求。魚とシュリンプ料理を所望した。襲撃犯は生存していた人質らに対し、イスラムの実践について講釈をたれた。

 一方、政府は早朝の会議で、ハシナ首相がレストランへの突入作戦を承認した。首相はこの際、突入は軍の突撃部隊が実行するよう求め、同部隊をダッカから150マイル離れたシルヘトから連れてくるよう指示した。この頃にはレストランの前に装甲車が隊列を組んでいた。

 襲撃犯らは殺害した外国人の遺体を指しながら「われわれがやったことが見えるだろう。間もなく自分たちもああなる」と従業員らに述べ、軍の突入で死ぬことを覚悟しているようだった。

 午前7時半、襲撃犯らは従業員に対して「われわれは出て行く。天国で会おう」と述べ、レストランの外へ出ようとした際、突撃部隊が突入した、という。

 こうして恐怖の一夜に幕が下りた。しかし、犯人たちの動機や背後関係など多くの疑問が残ったままだ。ISが本当に関与していたのか、関与していたとすれば、どの程度関わっていたのか、直接的な指示は出されていたのか。未解明の部分は多い。バングラデシュ当局が生存して拘束されたという犯人の1人から供述を引き出し、早急に捜査を進展させ、再発防止策を打ち出すよう望むばかりだ。