筆坂秀世(政治評論家、元共産党政策委員長)
共産党という党名の政党だから、「共産党は社会主義、共産主義の社会を目指す政党だ」と思われている。だが、同党の綱領をいくら読み込んでも、日本が社会主義、共産主義になればどんな国になるのか、まったく見えてこない。綱領には、次のように書かれている。
《発達した資本主義の国での社会主義・共産主義への前進をめざす取り組みは、二一世紀の新しい世界史的な課題である》
「前進をめざす取り組み」が今世紀の課題なのだから、今世紀中には、社会主義にはならないということだ。「安心してください。穿いてますから」というお笑い芸人がいるが、「安心してください。社会主義日本は、100年以上先のことですから」ということだ。
さらに、次のように言う。
《社会主義的変革の中心は、主要な生産手段の所有・管理・運営を社会の手に移す生産手段の社会化である》《生産手段の社会化は、その所有・管理・運営が、情勢と条件に応じて多様な形態をとりうるものであり、日本社会にふさわしい独自の形態の探究が重要である》

憲法については、《現行憲法の全条項をまもり》としており、天皇制もそのままということだ。その先については、《その存廃は、国民の総意によって》と国民の判断に丸投げしている。天皇制廃止への反対が多いから、とりあえず逃げているのだ。二つの敵のもう1つ、大企業に対しては《民主的規制》を行うという。
「民主的」とは何なのか。いまだって民主的に決められた法律に基づく規制は多くある。実は重点は、「民主的」にあるのではなく、「規制」にあるのだ。いまよりも多くの「規制」を作るということなのだ。果たして、これで経済の活力は維持できるのか。所詮、政権に就いたことのない野党であり、きれいごとは言うが、実現可能性は疑わしいものばかりなのだ。(筆坂秀世 夕刊フジ 2016.6.19)