今回の選挙の特長に「保守分裂」が上げられます。過去2回ありました。

 1度目は自民・公明・民社の推薦を受け安定した都政を運営した鈴木俊一都知事の4選目で1991年。自民党本部がNHKの元ニュースキャスターの磯村尚徳氏を推薦して「鈴木降ろし」にかかったのに自民党都連などが敢然と反旗を翻して支援し、保守分裂選挙に突入しました。結果は鈴木氏勝利。小沢一郎自民党幹事長が辞任する事態にまで発展しました。

 2度目は99年です。新人同士の争いとなり自民党本部と公明党が国際連合や外務省での経験豊富な明石康氏を推薦しました。自民党出身者はこの時点柿沢弘治氏が出馬表明をしていて都連の一部が支援、さらに舛添要一氏にも分散して保守大分裂の様相に加えて、野党民主党も鳩山邦夫候補を推してきました。様子をうかがっていたこれまた保守系の石原慎太郎氏が「後出しジャンケン」で制覇したのは先ほど述べた通りです。

 このようにみていくと単に「後出しジャンケン」だから強いというよりも候補者の知名度が抜群で、かつ文化人らしさが「首都の顔」として受けがいいと分かります。

 青島、石原、猪瀬の各氏はいずれも作家出身で、青島氏と石原氏は国会議員の、猪瀬氏には副知事の経験がありました。舛添氏も前述のようにテレビ番組で幅広く顔が売れてた上に国会議員や大臣も務めています。

 今回の都知事選候補もニュースキャスター出身の小池氏は「知名度と文化人らしさ」を持っています。増田氏は経歴こそ「元知事・元総務大臣」ですがメディアの露出も多いので満たしているともいえましょう。
野党4党幹部らと団結する鳥越俊太郎氏(中央)。左から社民党・又市征治幹事長、民進党・枝野幸男幹事長、鳥越氏、共産党・小池晃書記局長、生活の党・川島智太郎事務総長=7月12日、東京都千代田区・衆議院第二議員会館
野党4党幹部らと団結する鳥越俊太郎氏(中央)。左から社民党・又市征治幹事長、民進党・枝野幸男幹事長、鳥越氏、共産党・小池晃書記局長、生活の党・川島智太郎事務総長=7月12日、衆議院第二議員会館
 鳥越氏は毎日新聞記者出身。テレビ朝日『ザ・スクープ』のメーンキャスターや同局の『スーパーモーニング』などの出演で幅広い知名度があります。

 反対に、当選が有望視されていた95年の石原信雄氏や99年の明石康氏は行政官畑での経歴は立派でも一般的な知名度がそれほどなく、巨大な有権者と浮動票を抱えて1人を選ぶ選挙としては、国内最多の有権者を抱える都知事選では厳しい結果となったという分析もできます。

 3期務めた美濃部亮吉知事の場合、当時の「保守か革新か」の構図で革新側から登場した人物でした。イデオロギー(主義主張)的な争いであったのが第一としても、美濃部氏はテレビ番組に出演して知名度が高かったという要因も見逃せません。次の鈴木俊一知事は内務官僚出身で、自治事務次官を務めた他の道府県知事によくある「内務・自治官僚」出身でした。ただ彼が初当選する際の争点は財政再建だったので、行政官出身の方が安心できるという側面があったようです。

 知名度と文化人らしさを求める有権者の背景には、東京都に「これが争点だ」というほどの問題がないというのもありそうです。

 自治体独自の収入(税収など)を運営に必要な経費(出ていくカネ)で割った数値を財政力指数といいます。ちょうど「1」が出と入りがピタリ一致する状態で、近づくほど余裕があり、遠ざかるほど厳しい。1を割り込んだ分は地方交付税で賄います。この税は国税の一定割合を運営が厳しい自治体ほど手厚く配分するのが原則です。単年度で約15兆円ほど。使い方は限定されません。この地方交付税を受け取っていない唯一の都道府県が東京都。「不交付団体」と呼ばれています。大企業の本社が密集し、地価が高く、人口も多いためカナダの国家予算に匹敵する財政規模を誇っています。