太田教授と一つの仮説を立てた。水素分子は酸化ストレスを引き起こす活性酸素のなかで最も反応性が高いヒドロキシラジカルとは反応できるはずだ!実際、試験管の中でこの反応を確かめることができた。こうして水素分子に関する研究は世界で最も権威ある医学雑誌に掲載された。

 現在、心肺停止で慶應義塾大学病院に担ぎ込まれると水素ガスの吸入療法を希望するか聞かれる。水素分子によって脳や心肺に重篤な後遺症が残るのを防ぐことができるか臨床研究を進めるためだ。自分が携わった研究が患者さんの命を救うために役立つ。研究者冥利に尽きる。

 では水素水は?私自身、水素分子の効果を検証した後でも水素分子を高濃度に含む単なる水に何の効果があろうかと懐疑的であった。水素水で摂取できる水素分子は水素ガスとして吸引した時よりもはるかに少ない上、大半は30分程度で体外に排出される。

 実験結果は驚きであった。動脈硬化のモデル動物に水素水を飲ませると血管の蓄積物(アテローム)を減らすことができたのである。以降、我々を含めた国内外の研究者から、動物実験や人での臨床試験により、水素水は糖尿病の進行を遅らせ、ストレスやアレルギーによる炎症を抑え、抗がん剤による副作用を緩和し、パーキンソン病では水素水を飲まれた患者さんで病気の進行が抑えられるといった結果が続々と報告されている。
画像はイメージ
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 ただ、何にでも著効というわけではない。我々の研究では、炎症を主とする疾患の予防で特に良好な結果を得ているが、まったく健康な人が飲んだ時に何か効果が期待できるのか、まだまだ検討が必要だ。

 不思議なことだがパーキンソン病モデル動物に水素ガスを吸わせ続けても水素水のような病気を抑える効果は見られなかった。吸わせた方が体内に高濃度の水素分子が行き渡るのに何故か?その理由を知るために今も多くの大学や研究機関で地道な研究が続けられている。

 ちなみに高濃度の水素ガス吸入は避けて欲しい。ヘリウムガスのような吸引事故が起きる可能性がある。また、水素ガスを発生する入浴剤も販売されているが、これにも水素水のような効果が期待できるのか、さらに調べてみる必要がある

 現在、水素水は多くのメーカーから販売されている。研究成果を人々の健康に役立てることができると期待しているが、3つの大きな問題がある。