なぜ研究所は開戦シミュレーションを公開したのか


 ランド研究所がこのタイミングで尖閣諸島での日中開戦の机上演習を公開した理由は明白です。

 年初に日本政府は海上自衛隊の艦艇の尖閣諸島への派遣を中国に通達したことを示唆しました。そこで、ランド研究所は「本気で日中開戦を懸念している」というメッセージをFP誌を通じて日本政府に伝えたということでしょう。ランド研究所は国防総省との関係も非常に深いため、上記の机上演習結果の公開は米国からの非公式なメッセージであると捉えることが妥当だと思います。

 安倍政権の活発な対中外交は極めて見事であり、おそらく米国もそれを認めるところだと思います。しかし、それらが日本の実力の過信に繋がることを米国は真剣に憂慮していると考えるべきでしょう。そして、私たち日本国民も上記の机上演習の結果を重く受け止めるべきです。

改憲のために必要な「日中開戦」


 改憲派で衆参の3分の2を占めることに成功したとしても、国民投票で憲法改正に対して過半数からの賛同を得ることは極めて困難だと思います。そのため、実際の憲法改正には「日中の軍事的な衝突」が現実の脅威として日本国民に意識される必要があります。したがって、日中間での限定的な戦争が行われる可能性が上昇しています。

 米国も安倍政権の対中国包囲網を形成する外交的意図を意識しており、その先に存在する日本の首脳陣の決定的な間違い(日本が中国に限定戦争で勝利できる)について忠告を開始したということでしょう。

 日本の自衛隊は専守防衛の立場を墨守してきた結果、ミサイル攻撃が主体となる現代戦では「戦えない軍隊」になっています。これは日本国憲法による制約として課されているものですが、その制約によって憲法改正時に発生可能性が高い日中開戦において敗北することがほぼ確定しています。

 少なくともこのジレンマを解消することなく安易な日中開戦への道を開くことは、第二次大戦以来の再敗戦を望む自殺行為と言えるでしょう。安倍政権が現実を見据えた外交・安全保障政策を実行してくれることを期待します。