皇室典範には「天皇が、精神若しくは身体の重患又は重大な事故により、国事に関する行為をみずからすることができないときは、皇室会議の議により、摂政を置く」(第16条2項)との規定もある。この規定を柔軟に解釈して摂政を置き、皇太子殿下に就任して頂くことも有力な選択肢の一つであろう。天皇陛下はそのまま在位されるので、これまで述べて来たような制度の大幅な見直しは必要ない。元号も変わらない。

 摂政を置くという考え以外にも、単純にご公務を大幅に軽減するという案もある。既に前から宮内庁はそれを進めているが、さらにご公務の中身を精査し、皇太子殿下や秋篠宮殿下など他の皇族方が肩代わりできるようにしていくことが必要だろう。
新任の石原伸晃経済再生相の認証式に臨まれる皇太子さま=1月28日、皇居・宮殿「松の間」
新任の石原伸晃経済再生相の認証式に臨まれる皇太子さま=1月28日、皇居・宮殿「松の間」
 憲法上の国事行為については天皇陛下にしかできないが、「国事行為の臨時代行に関する法律」によって臨時に代行できる。これまでは天皇陛下の病気療養と外国ご訪問に限られているが、要件を緩和し、国事行為の一部代行を検討してもよい。この場合も天皇陛下は在位されることから、皇室制度の大幅な見直しは必要ない。

 天皇陛下は、ご自身が在位されることで迷惑を掛けるとお思いであると拝察するが、国民の一人としては在位して頂くだけで十分にありがたいという気持ちである。在位され、その上でご公務の負担をどのようにして軽減していくことができるかを具体的に検討していくことの方が、時間も掛からず、本当の意味で陛下のご意向にかなうのではないかと思われる。

 なお、今回の報道が出所不明の「宮内庁の関係者」からの情報でありながら、天皇陛下の「ご意向」として既成事実化し、政府に制度変更を促していることは、皇室の在り方として望ましくない。憲法が規定する「国民統合の象徴」は、天皇が如何なる政治的な立場に立つことがないことを求めている。特定の政治的な立場に立てば、賛成・反対の議論の渦中に入り、敵をつくることになって国民を統合することはできない。皇室には政治的対立を超越し、国民統合の機能を発揮することが求められている。今後、別のテーマでもカギカッコつきの「ご意向」が示されることがあるとすれば、皇室の尊厳が傷つくことにもなりかねない。