Q:検査を始めた初年度に中国産蒲焼きからヨーロッパウナギを検出。ヨーロッパウナギといえば09年にはレッドリストで絶滅危惧種に指定され、輸出規制も始まっていた品種ですね。検査結果を見たときの感想は?

──ああ、けっこうまだ出回ってるんだと。実際にやってみてわかるのは面白いもんだなあと思った程度でした。蒸したり焼いたりといった蒲焼きの工程をへても遺伝子解析でウナギのDNAが判明することは、すでにほかの大学が発表していた手法だったので、取り立てて目新しいことをやっているという気持ちもありませんでした。そのため初年度は、水産加工商品全般で検査を行いました。

蒲焼きのDNA検査を行う研究室員(撮影:Wedge編集部)
蒲焼きのDNA検査を行う研究室員(撮影:Wedge編集部)
 検査で判明したDNA結果は、東大時代の恩師である塚本勝巳教授(現・日本大学教授)をはじめとするウナギ研究者との飲み会の席でネタとして話したり、大学の講義で学生たちに伝えたりする程度でした。学生たちに対して検査結果を伝えようと思ったのは、有名なスーパーの商品でもこういった結果が出ているという事実を通して、世の中を疑う力を学生につけさせたいという思いからでした。

 2012年に引き続き検査を行ったのも、蒲焼きのDNA検査が、研究室に入ってくる新4年生に、標本の扱い方や研究ノートのつけ方、失敗しない検査方法など、研究の基礎を教えるのに最適だったことが主な理由でした。
  

Q:2013年から一気に新聞やテレビ、雑誌などメディアに出るようになりましたね

──そうですね。塚本先生や青山潤先生など、ウナギの研究で有名な先生方がメディア取材を受けた際に自分のDNA検査のことを話してくれたみたいで、次々、取材の依頼が入るようになりました。ニホンウナギがIUCNのレッドリストに登録された2014年は最もすごくて、レットリスト登録の6月から、国内の池入れ規制が発表された秋にかけて、新聞やテレビ、雑誌の取材が50件近くありました。あまりにも自分では意図しない展開だったのですが、とにかく、来るものは拒まず受けようと思って受けていました。

 2013年のシラスウナギ(稚魚)の不漁で資源保護が大きく叫ばれるようになる中で、塚本教授からも、「これからは、ただ単に研究用にウナギを使うだけでなく、保全の観点も持ちながら、研究者も研究や情報発信をしないといけない」と言われていたことも、取材依頼を受け続けた理由でした。

 ただ、取材は受けても、顔だけは出すまいと思っていたのに、とうとうテレビにも出てしまって。親は喜びましたが、自分としては複雑でした。