もし実際に延期となった場合、その影響は市場としての機能のみには留まらない。空いた築地市場の広大な跡地の一部は、都心部と晴海の選手村、そして豊洲の新市場を結ぶ環状2号線の未通区間の整備に使われる。残った広大な土地も、東京五輪に向けた仮設のバスターミナルとして利用される計画が明らかになっている。更には「五輪後」を見据えてサッカースタジアムなど大規模施設の整備案を温める民間事業者もあると報道されているが、こうした跡地に関する整備計画の検討・進行スケジュールに相当程度影響することは避けられないだろう。 
環状2号線の未通区間は築地市場跡地(中央左上)を通る(出典:都第一建設事務所)
環状2号線の未通区間は築地市場跡地(中央左上)を通る(出典:都第一建設事務所)
 この築地市場移転問題の行く末は、都政運営そのものにも影響を与え得る。 
 元々、築地市場の移転は石原都政下の2011年度予算に整備費が盛り込まれたことで正式に決まった。この時は、都議会で与野党の議席数が拮抗するなか、自民党東京都連の内田茂幹事長のもとで都議が死去するなどの顛末から議会運営に混乱をきたし、最終的には翌年(2011年)3月に民主党都議1人が自民党側に「一本釣り」される形で、薄氷を踏むように決まった経緯がある。 

 ※なお、この都議は翌月、世田谷区長選に民主党ではなく自民党東京都連の推薦で出馬した。自民党世田谷区支部との「保守分裂」選挙となった結果、保坂区長に敗北した経緯は今回の都知事選を彷彿とさせるものがある。 

 小池新知事は「利権追及チーム」の設置や、ホイッスルブロワー(内部告発者)からの情報提供を募る「目安箱」を通じた情報収集・公開などを掲げている(後述)が、築地市場の移転問題は上記のように過去政局となった案件でもあり、小池氏の動き次第では火種になる可能性もある。 

小池氏後継 衆院東京10区補選は「都議選」前哨戦に?


 国政選挙だが、小池都政のモメンタムを占ううえで注目されそうなのが、10月23日に投開票が見込まれる衆議院東京10区(豊島区と練馬区の一部)の補欠選挙だ。 この東京10区は、言わずと知れた小池氏の衆議院議員時代の選出選挙区であり、今回小池氏が都知事に転出したことで補選が行われる。民進党はこの選挙区で元NHK記者の鈴木庸介氏の公認を内定しているが、自民党からはまだ具体的な候補者名が出てきていない。 

 そこに、小池氏は今回同氏を最初から最後まで応援した若狭勝衆議院議員を擁立するとの見方がある。若狭氏は自民党都連所属の現職衆議院議員ながら比例単独の選出であり、地元の選挙区を持たない。自民党都連に所属する「政府高官」こと萩生田官房副長官が若狭氏の離党か除名の可能性を指摘した発言も報道されており、若狭氏が自民党を離れる事態になった場合、保守分裂選挙が再現する可能性もある。 

 この補選は、来年6月の都議選を睨んだ政治スケジュールのうえでも重要な選挙だ。現状、小池新知事にとっては、事実上、旧みんなの党系の会派「かがやけTokyo」だけが与党会派となる。つまり「オール野党」に近い都議会と対峙する環境で、厳しい都政運営を強いられる可能性が高い。都政運営を円滑にするためには、自民・公明両党と「手打ち」をするか、来年の都議選本選までかけて身内の都議を増やす必要がある。