ネット保守層からの支持も2割弱にとどまる


 しかしさらに注目すべきなのは、2014年の都知事選(前回)における、事実上の非自民ネット保守による史上初めての統一候補である田母神俊雄候補との比較である。この選挙で、田母神氏は約61万票を獲得したのは周知のとおりである。今次都知事選挙は、前回よりもはるかに高い投票率だったのに対して、櫻井氏は田母神氏の6分の1程度(約18.7%)しか得票できず、2割に満たない。潜在的に桜井氏と親和性に高いネット保守からの支持の、その大部分を取り逃がした計算になる。
 その理由などこにあるのだろうか。まず第一に、ネット保守層からの根強い「行動する保守」に対する嫌悪感が存在する。ネット保守の多くは、在特会や桜井氏の主張に一定程度共感はするものの、その手法において強い嫌悪感を示してきた。在特会やその周辺が、「朝鮮人を海に叩き出せ」「不逞朝鮮人云々」と街頭に出て叫ぶスタイルには眉を顰める、という具合である。

 その点を考慮してか、今回、桜井氏の街宣スタイルからは、「朝鮮人を〇〇~」などという過激な物言いは鳴りを潜めた。しかし、前述したようにゼロ年代後半から桜井氏の主導によって開始された街頭での排外的なデモや、ヘイトスピーチが、結句のところ2016年5月のいわゆる「ヘイト解消法」立法につながったことを有権者は鮮明に記憶しているのであり、この点において桜井氏を支持する人々はネット保守層の中でも非主流に追いやられたのである。

 今回、前回都知事選挙で田母神氏を支持したネット保守層の多くは、都有地韓国有償貸与問題(新宿区)を白紙にすると明言する小池百合子氏に投票した。増田氏は、筋論でいえば自民党主流候補でありながらも、過去の言動から「融韓的」と見られ忌避される格好になった。

 また、増田氏と同じくネット保守層から「融韓的」とみなされている石原伸晃氏から小池氏が徹底攻撃されたのも、逆に小池支持の起爆剤になった。ネット保守層の支持・不支持の基軸は、党や政策ではなく、韓国に対する態度、その一点というのだからある意味興味深い。

 つまり、今回桜井氏に一票を入れたのは、前回都知事選で田母神氏に票を投じたネット保守層の中でも、さらに強烈な「行動する保守」を補足したものにすぎず、嫌韓的姿勢は堅持するがそこまで過激な行動までは首肯しない大多数のネット保守層からの支持を得ることはできなかったのである(下図)。