議会が蛇蝎のごとく嫌う「市民ワーキンググループ」


上野 國分さんは、たとえば住民投票や直接選挙などのルールをつくることを含めて、民主主義は市民の政治参加の1つのルート、そしてそのルートは1つじゃなくて数が多いほどいい、つまり複数の民主主義という素晴らしい提案をしておられます。

國分 はい、そうなんです。

上野 ただ私が「哲学者っていうのは、能天気で楽天的な人なんだなあ」と思っちゃうのはさ(笑)、こういうルールを決めるのはすべて議会でしょ? 議会っていうのはね、住民参加が大嫌いなんですよ。自分たちの意思決定権の基盤が取り崩されちゃうわけだから。

 國分さんは本のなかで「市民のワーキンググループ」とか、いろんなアイデアを出されていますし、実際にいろんなところですでに実施されています。でも、どこでもワーキンググループ方式は、議会から蛇蠍(だかつ)のごとく嫌われていますね。

國分 それはよく知っています。

上野 現状ではどんな改革案にしても議会が決めるということ自体は、変えられないんじゃないですか?

國分 その点は、「決める」という行為をきちんと腑分けする必要があると思うんです。僕は「行政が決める」とは言っていますが、最終的にハンコを押してるのは議会ですよね。そうやってお墨付きを与える行為と、内容をかたちづくる行為とを、区別しなきゃいけない。

 議会が最終決定するということは動かないにしても、それ以前のかたちづくるところには影響を与えられるかもしれない。甘いかもしれませんが、たとえば世論、あるいはこういう本によって、「今の議会制民主主義だけではダメだから、いろんな制度がなきゃいけない」という声が高まって、議会でも受け入れざるを得ない、そういう状況をつくっていかなきゃいけないというのが、僕のいちおうの答えです。

上野 こういう話をしていていつも思い出すのは、かつて日本一の福祉の町と言われていた秋田県鷹巣町のことなんです。ここではワーキンググループをつくって市民の要求を引き出しました。人口1万9000人の町で、100人以上が福祉政策を提言するワーキンググループのメンバーとなり、これが完全に議会と対立しました。

 このワーキンググループは町長主導だったんですね。町長と議会とがねじれ構造になっていたために、町長が市民を味方につけて二重権力状況をつくり出すために、ワーキンググループを利用したというのが議会の見方でした。そして町長が落選したことで、ワーキンググループが主導していた福祉事業も頓挫してしまいました。