國分 その点は非常に注意しなきゃいけない。市町村合併のケースが典型なんですが、市長など首長が、自分たちを正当化するために住民投票を利用することがあります。僕は住民投票はあくまで住民主導で、住民が署名集めして実施するということが決定的に重要だと思います。住民投票さえやれば素晴らしい民主主義だっていうことには全然ならない。この点は本でもはっきりと書いておきました。議会と首長が共謀すれば、住民投票を実施させるのは簡単です。だから、住民投票もワーキンググループも、やればいいってことじゃないのは、強調しておきたい点ですね。

東京電力福島第1原発=2016年11月
東京電力福島第1原発=2016年11月
 でも僕は「住民投票なんかやらないほうがいいよ」と直接言われたことは、まだ一度もないんです。ツイッターでも一度もないんじゃないかな。「道路なんかつくらせておけばいいんだよ」とは言われたことがありますけど。だから「行政はあまりにも住民の意見を聞かなすぎる」というコンセンサスは、人々の間にわりとできているのかなという実感を持ちました。

上野 こういう例はどうですか? 原発再稼働をめぐって、都民投票をやろうっていう運動がありましたね。あれに良識ある人の中から反対がありました。「今、都民投票なんかやってしまったら、取り返しのつかないことになるかもしれない」という不安からです。投票する都民を信頼できないっていうね。

國分 それは原発というイシューの特殊性もあったのかもしれない。原発をつくる云々っていうのは、東京都庁が決めていることではなかったわけですから。

上野 それはそうですが、東京都は東電の最大の株主ですよ。

國分 そういう意味ではもちろん大きい影響力を及ぼす可能性がありましたけど、道路とはちょっと違うように思います。

 ただ僕は、思い上がりかもしれませんけど、今回の小平の件で、住民投票という言葉がだいぶ広まったような気がしないでもないんです。これをきっかけに、民主主義をめぐる議論、あるいは世論を、いろんなかたちで醸成していけるんじゃないかっていう希望は持ってますね。