ご近所同士で政治や原発の話ができるようになった


上野 小平市の住民投票では、道路建設の是非じゃなくて、住民の意思を聞こうという、ワンクッション置いた提案をなさったんですね。つまり市民に、「これ、キミの問題なんだよ。当事者になりなさいね」という、そういう働きかけをなさったと考えていいんですか?

國分 そうですね。「あなたは当事者じゃないですか? どう考えますか?」という呼びかけだったと思います。「もし当事者だと感じられたら議論しましょう。そのために住民投票をやりましょう」ということです。

 この選択肢をつくった時点では、僕はまだ運動に関わっていなかった。住民グループの方々がすごく議論してつくったんです。僕はその選択肢に心から感動して、これが参加型民主主義だって思った覚えがありますね。

上野 道路建設是か非かを問うのではなくて、市民の意思決定への参加を問うところに持っていったのは、ひとつの知恵だったと私も思います。市民参加意識っていうのは、結果よりもプロセスにあるので。

 というわけで小平市の3人に1人は市民意識をお持ちになった。諸般の事情で投票に行けなかった人もいるでしょうに、小平市の全有権者の3人に1人は投票に行ったというのはすごいことです。この事実は消えないですよ。

國分 それに、地域で政治の話をするようになったんですよ。娘のママ友とか、今までだったら挨拶しかしなかった人とコンビニで会ったときに、住民投票の話をするようになった。それは大きな収穫でした。

上野 そうですね。原発事故は大きな犠牲を払いましたけれども、社会学者の小熊英二さんに言わせると、そのせいで、今日本人は、原子力リテラシーが世界で最も高い国民になった。「ベクレル」という言葉がそのへんで通用するし、「シートベルト」が「シーベルト」に読めてしまうっていう(笑)。原発や政治をめぐる話を近隣の人たちとできるようになった、この意識が後退することはないでしょう。