守備練習の際、ノッカーにボールを渡す役目を女子マネジャーが務める光景はごく日常的だ。日々の練習試合でそれを咎める相手監督などほぼ皆無だろう。チームによっては、ティーバッティングのボールを女子マネジャーが上げている。中学時代から野球経験を重ねている女子マネジャーの中にはノッカーを務める者もいる。さらには、試合出場は禁じられているが選手として三年間、練習を重ねる女子部員もいる。

 高校野球は、女子マネジャーがいなければ成立しない。それくらい大切な存在だ。なのに、晴れ舞台から女子マネジャーを追い出すなど、言語道断だ。

甲子園練習を終え、引き上げる大分の首藤桃奈マネジャー(右)
=8月2日、甲子園球場
練習を終え、引き上げる大分の首藤桃奈マネジャー(右)
=8月2日、甲子園球場
 女子のグラウンド立ち入り禁止の規定があること自体、おかしい。だが、この規定を放置し、改善を求めずにいた私たちにも責任がある。いま改めて、甲子園での女子マネジャー活躍の場を保証し、試合時にベンチでスコアブックをつける記録員、練習時の補助員やノッカーを女子マネジャーが務めることを認めるよう規則を変えてもらうべきだろう。

 女子が選手として出場する権利だって、認めるべきだと私は感じる。高校生になれば男女の体格の差が顕著になり、とくに硬球を扱う高校野球では安全の問題は十分に配慮する必要がある。だが、それは野球経験の乏しい男子部員も同様だ。

 男子選手との競争に勝ってベンチ入りし、試合出場の実力を認められた選手を「女子だから」という理由で排除する権利が高野連にあるのだろうか。女子野球の日本代表だった西朝美捕手などは、男子の投手から見ても、「あの捕手に受けてもらいたい」と、憧憬を抱くくらい素晴らしいキャッチングセンスの持ち主だ。

 私が監督を務める東京武蔵野シニア(中学硬式野球チーム)にもひとり女子選手がいる。入団時には心配も感じたが、彼女は3年夏までなんら支障なく活動し、今年は主将も務めた。女子が主将を務めることに、選手も父母も誰一人異論をはさまなかった。それだけの実力を備え、リーダーシップを発揮したからだ。

 この問題がネット上を中心に大きな議論を呼んでいることで、高野連や高校野球がいい意味で動き出す期待も感じる。これまで高校野球界は「思考停止状態」に近く、長年の伝統や習慣が良きにつけ悪しきにつけ維持され、自由に議論されることなく過ぎてきた。ネットの普及で自由な議論が喚起され、本来見直すべき課題を多くの人が共有し、アイディアを出し合う動きは歓迎すべきではないかと感じる。