ちなみに、HPVワクチン接種後症候群とCFS/MEとの相違点は、後者では「不随意運動、痙攣、幻視、幻聴、妄想、暴言」等がほとんどみられないこと。被害者会に登録している女子中高生の中には真のCFS/ME患者が一人以上「紛れ込んで」いると推察されるが、そのことは問題とするに足らないことは常識的に考えて自明であろう。

 この項の最後に、名古屋市による計7万人のHPVワクチン接種・非接種者についての調査報告に触れないわけにはいかない。名古屋市は様々な症状の一つ一つについて「だけ」比較したため、当然のことながら明確な結果は出なかった。HPVワクチン接種後症候群というくくりで、複数の症状を組み合わせての比較(当然、組み合わせは何種類も必要)をしなかった理由は不明だ。症状の組み合わせでの比較検討は厚労省の研究班による調査報告に期待する。
 

新たな「疾患」だと示唆される理由

 新たな疾患として世界レベルの医学界で認知される条件としてあげられるのは、症状の新規性はもちろん、時間と空間の広がりの二点で未知の疾患が発生していると考えないと説明がつかないこと。原因の判明も客観的な検査による診断が可能なことも、新たな疾患と認定される必須条件ではない(例えば、CFS/MEは原因不明で、しかも検査による診断は不可能であるが疾患として認知されている)。

1. 空間の観点
 米国、イギリス、アイルランド、デンマーク、フランス、ドイツ、オーストラリア、インド、コロンビア等の諸国において、HPVワクチン接種後症候群が多数報告されており、日本と同様に多かれ少なかれ社会問題化している。医師組織が接種中止を求めたり、被害者・家族が裁判に訴えたりしている事実はネットで検索したら枚挙にいとまがない。一部の医師は「日本だけで社会問題化」しているように主張しているが、根拠を欠いている。

2. 時間の観点
 HPVワクチンを接種した生来健康な女子達の一部が、多彩な症状で日常生活が困難になっている事実が第一に重大(一部の医師は、出来事の時系列関係は因果関係を証明しないと当然のことを言い、被害者団体を揶揄しているが、言うまでなくそんなことは被害者も父母も理解している)。このような症状の発現が他のワクチンでも極めて稀にはあったと考えられるが、社会問題化することはほとんどなかったという事実も重大だ。

 決定的なことは、厚労省が積極的な接種推奨を中止した2013年6月以降は接種が激減し、それ以後に接種してから発症した患者の被害者会へ登録は二人しかいないこと。HPVワクチン接種後症候群を診療している医師達は「新たな患者さんは(ほとんど、あるいは全く)来てない」と証言している。

 思い起こしていただきたい事実がある。チェルノブイリ原発事故後に、小児甲状腺癌が激増したとき、放射線による増加ではないと一部の医師は主張したものの、その後に発病が経時的に減少したために、主張の誤りが明らかとなったことを。

 一部の医師は、「そのような症状の患者はもともと存在しており、減じてない」との根拠無き仮説を未だに維持し、「HPVワクチン接種が激減したから、HPVワクチンが原因とは疑わないので、HPVワクチン接種後症候群をみている医師のところにはいかないだけだ。被害者連絡会に登録などしないのだ」と主張するかも知れないが、事実による根拠を提示できるとは思えない。

 これら二点の重要性は、医学的知識がない一般の方々にも自明だと思う。