HPVというのは、大体100種類くらいあって、皮膚と粘膜に、ほとんど常在的にいるウイルスです。そのうちの15種類くらいが、ハイリスクグループと言われ子宮頸がんと関係があります。ワクチンが効くのはわずか2種のウイルスです。HPVは100種類くらいあり、子宮頸がんと関わるハイリスクHPVといわれるのは15種類です。日本人の場合、子宮頸がんで見つかる16型、18型の頻度は併せて58.8%。認可されているワクチンは16型、18型が対象のもの(サーバリックスでハイリスクの方はガーダシルの同様)ですが、日本人でそれ以外に多いのが52型、58型、33型があります。このワクチンでは16型、18型以外のハイリスクHPVの感染は、予防できないのです。

 しかも、ウイルスを取り込んでも、自然のメカニズムでウイルスの存在がなくなり、持続感染になるのはごく一部で、さらにその一部、HPV感染を起こしたものの0.15%だけしかがんにならないのです。HPVというのは皮膚常在のウイルスで、ウイルス単独で存在しても、そこで増殖することはできません。細胞の中に入り込んで、その中で細胞の機能も利用しながら増殖するのです。

 たとえば、HIV(エイズウイルス)はリンパ球の中で増え、B型肝炎ウイルスは肝細胞の中に入って、そこで増殖するという特徴があります。HPVは、子宮頸部の粘膜の上皮細胞の中に入り込んで、そこで生き続けていくわけです。他のワクチン療法と違って難しいのは、ワクチンを使うことによって、HPVの感染を防ぐことはできますが、がんそのものを防ぐことはできないのです。

 HPVに感染することにより、その後、細胞の異形成をつくり、それらががん化し、さらに進行して浸潤がんになるということであれば、この最初のHPVの感染をワクチンで防ごうという考え方が出てきたわけです。しかし感染してからがん化して浸潤がんに変化するまでには、数年から十数年という時間がかかります。非常にゆっくり進んでいくので、現在の検診のシステムで充分この変化を捉えていくことは可能です。そうしたことを考えて、ワクチンの必要性も考えていくべきでしょう。

 うつらない病気、他に安全で有効かつ経済合理性ある対策があることを情報提供し、副作用被害防止のために必要な政策へシフトすることが必要ですが、子宮頸がんワクチンはまさに、WHOが推奨しているとか、世界では日本のような被害はない、最近では、ワクチン接種をやめたままでいると将来的に日本は、子宮頸がん対策で世界の遅れをとるなどの意見があり、被害者を詐病や思春期の一過性の症状扱いしたり、提訴を「不幸なこと」などと揶揄したりする主張がされています。しかし、実際にはがん予防効果は限定的であり、「がん予防ワクチン」というネーミング自体おかしいこと、世界的にも深刻な副作用被害が多発していることなどが明らかになっているのです。

厚労省は予防接種行政を根本的に見直すべき

 全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会や自治体議員や教員、市民の支援者による取り組み、民間の研究者による治療や原因究明への努力は、国の救済に向けた動きを促してきたものの、国は未だに被害と接種との間の因果関係を認めず、相談体制や協力医療機関の設置など、小手先の対応に終始してきました。厚労省の検討部会は2014年、ワクチン後の症状について「心身の反応によるもの」との検討結果をまとめる一方、健康被害を訴える患者を診る協力医療機関を整備し、研究班を作って治療法の開発などを急いでいるとされていますが、その対応は被害者の救済支援とは程遠いものです。

 2016年7月22日、厚労省の「ヒトパピロマーウイルス感染症の予防接種後に生じた症状の診療に係る研修会」で出された「当面の対応」は、2015年9月17日の審議会での結論を敷衍したものでした。被害者の声を無視できない厚労省は、頑なに因果関係を認めない一方で、2015年9月17日に、副反応を検討する審議会の合同開催の委員であり、疾病・傷害認定審査会感染症・予防接種審査分科会(分科会長五十嵐隆、稲松孝思、岡部信彦、多屋馨子(敬称略))連名で、「ワクチン接種後に生じた症状に関する今後の救済に対する意見」(以下、有志の意見書)をだしました。ここでの結論は、因果関係は認めないまま、ある程度の救済は行うという中途半端なものでした。

 その内容は、①患者とのていねいな個別交渉で対応する、②入院以外にも医療費、医療手当を払う(接種を受けた時期が定期接種化(2013年4月)の前か後かで救済範囲に差があるのを改善し、定期接種化前では入院相当しか出なかった医療費と医療手当(月額 34,000~36,000円)を、定期接種化後と同じように通院でも出す)、③患者の治療のために患者からの研究への協力を得やすくする仕組みを検討する(因果関係が否定された場合でも、治療が必要な人には研究に協力してもらうとの名目で支援金を出す)、④協力医療機関が全都道府県に整備されたが、患者に適切な治療ができるよう、更に診療の質の充実を図る、⑤患者の学習支援や教育現場との連携等、患者の生活を支えるための相談体制を拡充する、というものでした。