その実態は、被害者に手厚い保護を与えるための制度だと強調していたにもかかわらず,実際の運用は敵対主義的になっており,容易に因果関係が認められない状況になっている。予防接種と副反応との因果関係が現代の医学では十分にわからないことのリスクを,どちらかといえば被害者に負わせているのである。なお2001年から2005年までの期間で,この救済制度の恩恵を受けた被害者は年平均66件である。(以上、医療と法を考える 法学教室 2007 June № 321 予防接種被害と救済 樋口範雄より抜粋引用)

日本のこれから~国の責任追及と訴訟への支援を

 これまで述べてきたように、子宮頸がんワクチンはいまだに定期接種の対象に入っています。未だに接種を受けている人がいるのです。また、いつ被害が発症するかとの不安な思いを持っている接種をした人に十分な説明責任を果たすためにも、定期接種から外し、政策の誤りを認め公的に謝罪すべきでしょう。まずはここから始めるとしても、被害者のための救済体制の整備もされていません。厚労大臣は超法規的な救済も視野に入れるとの発言をして、予防接種リサーチセンターで、わずかばかりの救済事業を始めましたが、医療費や医療手当の支給の留まり、その手続きも煩雑で被害者を苦しめています。

 こうした中で、定期接種からもすでに5年を超えた今、法的裏付けのある公的な救済体制を求めての提訴は当然の権利です。提訴にネガティブな意見がネット上散見されますが、再発防止の観点から、国は真摯に訴えを受け、検証委員会を設置し、第三者機関として導入の経緯から再発防止の観点から、国自らがこれまでの姿勢を問うことがなければなりません。それをしないで、接種再開など許されるはずがないことは言うまでもありません。

 最期に、お子さんがインフルエンザワクチンで被害に遭われ、「私憤から公憤へ」の著者であり、4大裁判の被害者をまとめ上げ26年の訴訟を戦い抜かれた吉原賢二さんの言葉を引用させていただきます。少数の被害者は「ひとごと」ではなく、もしかしたら自分にもあたるかもしれない災厄であり、社会の多数者の問題として意識されなけれならないということです。人がそれぞれの知恵とわざをもって造りあげた文明社会で、連帯の精神を忘れたらどうなるでしょう。社会は崩れるほかないと思います。予防接種が社会問題となって約40年、このことを明らかにしてきた私どもの運動はそれなりに意義があったと確信します。(中略)伝染病と人類の闘いは有史以来ですが、ワクチンは万能ではなく、その効果の限界、副反応の状況をよく把握して使わなければなりません。

  問われているのは、私たち一人ひとりの医療リテラシーかもしれません。子宮頸がんワクチン禍訴訟を全力で支援していきます。


(代表研究者 牛田享宏  愛知医科大学医学部学際的痛みセンター教授)
[注3]ルンバール事件(東大病院ルンバール事件) 1975年10月24日に下された最高裁判決(民集29巻9号1417)。因果関係について、裁判所が因果関係の証明に関して「指導的な判断」を示した判例
(この提言で7つのワクチンの積極的推進の方向が出されたが、特に子宮頸がんワクチンについては委員間で疑問も呈される中、座長の加藤達夫氏が異例の意見書を出していた)